【大相撲】 歴史的偉業の裏側にあった師匠の言葉 二所ノ関親方&大の里「最強タッグ」に見る未来
二所ノ関親方「優勝なんてまさか考えてないだろうな」
二所ノ関親方: 同じ相手に同じ技で3回連続負けてしまったということで、流れを一気に持っていかれる、ガッと落ちてくるところなんですけど、そこで「優勝なんてまさか考えてないだろうな」と大の里に言いました。 「3敗した時点で優勝はないと思えよ」、「3敗の優勝は優勝じゃないぞ」と鼓舞する意味も込めて厳しい言葉を使いました。 その言葉を受けた大の里は。 大の里: 3敗目を喫してから厳しい言葉を言われて、自分自身も落ち込んでいた部分もあったんですけど、まだ本場所は終わっていないのでしっかり頑張ろうと思いました。 優勝したい気持ちがあったんですけど、3敗してから「優勝はないな」と自分自身に言い聞かせていましたし、目標を変えて来場所につなげるように1つでも多く勝ちたいと思って土俵に向かいました。 親方の叱咤激励を受け、優勝のプレッシャーから解放された大の里は、12日目以降は負けなし。千秋楽も優勝を争う阿炎との直接対決を制し、所要わずか7場所での幕内最高優勝という快挙を達成。親方の言葉が、大記録のキーポイントとなった。
見据えるのは初優勝のその先
史上最速優勝はもちろん、部屋から初めての優勝力士の誕生とあって、さぞかし親方も喜んでいると思いきや、愛弟子への厳しい注文が次々と出てきた。 二所ノ関親方: 個人的には3敗での優勝は優勝じゃないと思っています。次の優勝というのは13勝2敗以上の優勝、高いレベルでの優勝を目標にしていかなければいけない。そのためには、とにかく体づくり、怪我をしないこと。 まだ入門して1年ですから、まだ関取で1年戦っていない。しっかりと1年6場所を戦い抜ける体づくりが必要。大相撲は6場所戦い抜いて、常に上位の地位に居続けることが大事。1場所抜けてしまえば、これまでの活躍も白紙になってしまいますから。 それは僕も苦い経験をたくさんしているので。白紙になった瞬間、記者・カメラマンがみんないなくなりましたからね。ドライですから、この世界は。 現役時代、幾度となく優勝を逃し(準優勝12回)、その度に相撲界の無情を感じてきた二所ノ関親方。実に深い言葉である。 先場所の尊富士に続き、今場所の大の里も大銀杏の結えない「くわい頭」の優勝力士が連続で誕生するなど、若手の台頭により急速に世代交代の波が押し寄せてきた大相撲界。 新時代が近づくうねりの中で、果たして抜け出すのか誰なのか。その中心にいるのが、二所ノ関親方と大の里の「最強タッグ」であることは間違いないだろう。
山嵜哲矢