JAL、貨物機13年ぶり復活 767-300BCFで投資抑制、DHLと長期契約
日本航空（JAL/JL、9201）は2月19日、自社で運航していた中型旅客機ボーイング767-300ER型機を改修した貨物専用機767-300BCFを就航させた。JALが貨物機を自社で運航するのは経営破綻した2010年10月以来13年4カ月ぶりで、初便は成田空港から満載となる50トン近い貨物を積み、台北へ向かった。独DHLエクスプレスと協業し、東アジアで旺盛なeコマース需要を取り込む。 【写真】13年ぶりに復活したJALの貨物機 JALは自社で保有する767-300ERのうち、3機を767-300BCFに改修。機体前方には、貨物郵便事業部門「JAL CARGO（JALカーゴ）」のロゴが大きく描かれた。 「BCF」はボーイング・コンバーテッド・フレーターの略で、最大搭載重量は客室だった「メインデッキ」の上部貨物室が32トン、改修前からある床下の下部貨物室が16トンの計48トンで、上部にはパレットを24台、下部にはパレット3台に加え、コンテナを9台搭載できる。メインデッキ前方左側には、貨物用パレットを積み込む134 x 103インチ（340 x 262センチ）の大型ドアが1カ所新設され、窓はすべてふさがれた。 シンガポールで改修された初号機（登録記号JA653J）は、1月17日に成田空港へ到着。2号機（JA654J）は2月後半にも成田へ戻る見込みで、3号機は2025年度に就航を計画している。 767貨物機は、成田と中部を起点に台北（桃園）、ソウル（仁川）、上海（浦東）の東アジア3都市へ運航。貨物事業はボラティリティ（振り幅）が大きいことから、DHLに貨物スペースを長期契約で販売することにより貨物事業を下支えする。 初便の台北行きJL6719便は、生鮮品や電子部品、eコマースの貨物を積み、成田を午後3時33分に出発。同58分に離陸した。台北には現地時間午後6時55分ごろ到着する見通し。復路は台北発中部行きJL6718便、中部発ソウル行きJL6749便を運航後、ソウル発成田行きJL6750便で明日成田へ戻る。 JAL貨物郵便本部の本部長を務める木藤祐一郎執行役員は19日、成田空港で開かれた就航記念式典で「2010年以前のJALグループのビジネスの単なる復活ではない、新しいチャレンジ。貨物郵便事業を持続的に成長させる」とあいさつした。 協業するDHLは、香港にあるアジア最大規模のハブ施設「セントラルアジアハブ」を拡張するなど、航空貨物インフラを継続的に強化。DHLジャパンのトニー・カーン社長は「今日集荷された荷物が最短で明日届く。近年の成長は越境ECで、JAL路線を利用することでさらなる強化になる」と語った。 破綻前にJALが運航していた貨物機は、2009年度末時点で10機だった。今回は新造機を使わず、自社の旅客機から貨物機に改修することで、機材費用を抑えた。あらかじめ収益を下支えするパートナーと組み、機材投資を抑えることで、貨物事業の収益性を高める。3機の767貨物機に加え、ヤマトホールディングス（9064）が3機リース導入するエアバスA321ceo P2F型貨物機も、JALグループのLCCで連結子会社のスプリング・ジャパン（旧春秋航空日本、SJO/IJ）が運航。首都圏から北海道や九州、沖縄への長距離トラックによる宅急便輸送の一部を補完する。 767貨物機も、3機体制になる2025年度以降は、昼間は国内線、夜間は国際線と稼働率を高める運航も想定している。
Tadayuki YOSHIKAWA
