大震災を描くにはあまりに脚本が雑すぎる…NHK朝ドラ「おむすび」のヒロインに私がまったく共感できないワケ
橋本環奈主演のNHKの朝ドラ「おむすび」が苦戦している。ライターの吉田潮さんは「震災を描く意義と使命感は伝わってくるのだが、どうしても物語に入り込めない。これは出演している俳優のせいではない」という――。 【写真】第35回日本ジュエリーベストドレッサー賞の20代部門を受賞した橋本環奈さん ■NHK朝ドラ「おむすび」の物語に入り込めない 1995年1月17日に起きた阪神・淡路大震災から今年で30年。東日本大震災の甚大な被害や、昨年の元日に起きた能登半島地震で、悲しみの記憶がどんどん上書きされていく地震大国・日本。ドラマで震災をとりあげることの意義は大きく、どう描くかも注目されるところだ。 過去、阪神・淡路大震災を描いたドラマで色濃く記憶に残っているのは、カンテレ制作のスペシャルドラマ「BRIDGE はじまりは1995.1.17神戸」(フジ系、2019年)だ。主人公を演じる井浦新は建設会社の人間。地震で線路ごと崩壊し、陸の孤島と化した神戸の六甲道駅を74日間で復旧させたという実話に基づいたドラマだった。 当時の苦労話が主軸ではあるが、被災地の現状は生々しく描かれた。窃盗が頻発、質の悪いボランティアなど、人間の浅ましさも描写し、20年以上たって悲惨な記憶が風化しかけている現在とリンクさせる設定も秀逸だった。 また、最近再放送していたのが「心の傷を癒すということ」(NHK、2020年)だ。柄本佑が演じる在日韓国人の精神科医が、震災でPTSD(心的外傷)を負った人々の心に寄り添う物語。被災した人の罪悪感や不謹慎の壁に真摯に向き合い、元気の押し売りや無神経に励ますことの罪深さにも触れた。静謐な名作だった。 ■「ふてほど」で描かれた震災 震災が主題ではないが、昨年話題になった「不適切にもほどがある!」(TBS)でも昭和から令和にタイムトリップした主人公(阿部サダヲ)が、阪神・淡路大震災で自分が娘とともに命を落とすことを知る、という設定だった。コメディの中にひとさじの抗えない悲運をおとしこみ、残された者の苦悩により一層肉迫した気もする。 脚本家・宮藤官九郎は2013年の朝ドラ「あまちゃん」でも東日本大震災を最大限の配慮をもって描いたことがあり、その手腕が評価された。 震災をどう描くか。その重責を今まさに背負っているのが朝ドラ「おむすび」である。橋本環奈が演じるヒロインは、幼い頃に阪神・淡路大震災を経験した設定。過去の朝ドラでも、「甘辛しゃん」(1997年)や「わかば」(2004年)で、ヒロインが身内を阪神・淡路大震災で亡くしている。 直球で喪失感や罪悪感を描くのかなと思っていたら、どうも違う。全体的に、震災を描く意義と使命感は伝わってくるのだが、どうしても物語に入り込めない。その理由を考えてみる。