【問う 時速194km交通死亡事故】大分地裁初公判、危険運転致死罪巡り全面対立 検察側「現場付近で何回も高速度走行」 弁護側「真っすぐ直進できていた」
■遺族「体の損傷…高速度以外にない」
「何も言えなくなった弟の代わりに声を上げてきた」。事故で弟を亡くした女性(58)は初公判の閉廷後、大分市中島西の県弁護士会館で記者会見に臨んだ。 時速194キロの車がぶつかった衝撃で、弟はシートベルトがちぎれて、車外に投げ出された。公判で体の損傷、服装がイラストや写真で示されると、女性は何度も涙を拭った。「どれだけ痛かったであろうか。これだけの傷は高速度以外に理由はない。過失で起こす事故ではない」と訴えた。 「被害者と遺族に申し訳ない」と謝罪した被告に対し、女性は「私たちの方を全く見なかった。一体、誰に謝っているのか分からなかった」と受け止めた。 危険運転致死罪を巡っては、猛スピードや飲酒運転といった事故に適用されないケースが全国で相次ぐ。要件の曖昧さが指摘される中、法務省は今年2月、条文の見直しを視野に入れた有識者検討会を設置。「法定速度の○倍以上」といった数値要件を新たに条文に盛り込むかどうかの議論が進んでいる。 初公判には、昨年夏に事故遺族らで結成した「高速暴走・危険運転被害者の会」のメンバーも駆け付けた。 女性と共に共同代表を務める栃木県の遺族(60)は、時速160キロ超の車が昨年2月に宇都宮市で起こした事故で夫=当時(63)=を失った。今後、加害ドライバーを危険運転致死罪に問う裁判を控えている。 会見に同席し「危険運転が適用されずに苦しんでいる遺族にとって、大分の裁判が光となればと思う」と語った。大分市に滞在し、全ての公判を傍聴するという。