【コラム】第52回「フェルスタッペンが圧倒的だった2023年…新シーズンの勢力図はどう変化する」|F1解説 ムッシュ柴田のピットイン
ライバルたちの奮闘も大きな見どころに
シーズンを楽しめたもう一つの理由は、フェルスタッペンを追う者たちによる激しい攻防でした。 シーズン序盤はアストンマーティンのフェルナンド・アロンソ。中盤以降はマクラーレンのランド・ノリス、オスカー・ピアストリの若手コンビ。そして終盤にはフェラーリのチャールズ・ルクレールが強さを見せました。レッドブルドライバー以外で勝ったのは、結果的にはフェラーリのカルロス・サインツただ1人でした。 しかし表彰台には、レッドブルを除いて9人ものドライバーが上がっています(メルセデス、フェラーリ、マクラーレン、アルピーヌの各2人と、アストンマーティンのアロンソ)。 それに対し2022年、レッドブル以外で表彰台を射止めたドライバーは5人のみ(フェラーリ、メルセデスの各2人+ノリス)。言い換えれば去年の表彰台の顔ぶれは、いわゆる「3強チーム」のドライバーにほぼ固定されていたということです。 2023年はマクラーレンとアストンマーティンが大きく戦闘力を上げ、レッドブル&フェラーリ&メルセデスの3強を脅かす存在になった。そして去年の4位から6位に後退したアルピーヌも、突然のチーム代表ら首脳陣の更迭やチーム内の確執があったにもかかわらず、少なくとも表彰台に上がるだけの力は持っていたことがわかります。
2024年は力関係にどのような変化が生まれるのか
レッドブルは2023年もタイトルを独占し、勝利数も前年の17勝に対して19勝。獲得ポイントも759点から860点と100ポイント以上上積みしたことで、さらに強さを増したように見えます。 ではレッドブルの優位は、はたして2024年も変わらないのか。 先ほど「RB19の車体的優位は、すでにそれほど大きくはなかった」と述べましたが、これはシーズン後半には大きなアップデートをやめ、2024年マシンの開発に専念していたことも関係していたと思われます。そう考えると来季も、レッドブルが序盤からライバルたちをあっという間に引き離してしまうかもしれません。 しかし一方で僕はシーズン終盤、マクラーレンとフェラーリの健闘を見て、力関係に変化の兆しを感じました。 ラスベガスのルクレールはあと少し運に恵まれていれば、フェラーリは2勝目を挙げることができていたはず。それだけ実力のあるマシンパッケージでした。 そしてマクラーレンは車体性能の高さに加えて、ドライバーラインナップの点では10チーム中最高と言っていい。2024年にF1での2年目を迎えるピアストリは、さらなる進化を遂げるはず。 レッドブルとフェラーリ、マクラーレンが三つ巴の戦いを繰り広げるような、そんなシーズンになったら最高ですね。 文・柴田久仁夫(しばた・くにお) 1956年静岡県生まれ。1980年代よりフランス・パリを拠点にTV番組の取材ディレクターとして活躍後、1987年から約30年間に渡りF1グランプリを現地取材。趣味のトレイルランを生かし、裸足でサーキットをランニングしながらコースの特性やサーフェスの変化を把握する。セバスチャン・ベッテルをはじめ、著名F1ドライバーたちとも一緒にサーキットをランニングしながら独自取材を行う。2016年より本拠地を東京に移し、現在は『DAZN』F1中継で解説を担当する。
柴田久仁夫
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