4WAYのフォルダブルPCに「最強の便利屋」まで……HPの新たな“攻めのPC”たちをレビュー
日本HPが10月18日に発表した2つの新製品『HP Spectre Foldable 17』『HP ENVY Move All-in-One』は、コロナ禍によって大きく変化した価値観を元に作られた“攻めのPC”だった。 【写真】約80万円の超万能フォルダブルPC『HP Spectre Foldable 17』を実際に触ってみた 今回、筆者はオーストラリアで行われた記者説明会に参加し、実物を体験。さらに、シドニーで開催中の『SXSW Sydney 2023』にHPとIntelが共同で出展するということもあり、同フェスの会場を訪れた模様などを数回にわたってレポートしたい。 まずはシドニーにある発表会会場へ。発表会では『HP Spectre Foldable 17』『HP ENVY Move All-in-One』という二つの新製品が発表された。発表会に登壇したのはHP社からKoh Kong Meng氏(Vice President & Head, Personal Systems Category Greater Asia)、Sash Vrgleski(Consumer Notebook Category Manager - Australia and New Zealand)、Ben Fermaner(Home Printing Systems Category Manager - Australia and New Zealand)の3名と、Intel社からGlen Boatwright(HP Strategic Account Manager, Intel Australia & New Zealand)の計4名。彼らのコメントも交えながら、製品が開発された背景や、製品の特徴について記していきたい。 スピーカーたちが話したのは、コロナ以降における人々のワーク・ライフスタイルの変容。オフィスに、家に、それ以外の場所にと様々な場所で働くようになったのは誰もが知るところだが、それを可能にしているのはPCというデバイスがあるからだ、ということを忘れてはならない。彼らはこの時代のことを「フレキシビリティ=柔軟性・適応性の時代」だと言う。そして、PCにもそれが求められ、パンデミック以降・AI時代のPCは「パーソナルコンピューター」から「パーソナルコンパニオン」になりつつあるとも。 そんな中で彼らが発表したのが、まさにそんなフレキシビリティを体現した『HP Spectre Foldable 17』『HP ENVY Move All-in-One』の2機種だった。 『HP Spectre Foldable 17』はその名の通りの「フォルダブル」端末。使い方は大きく分けてタブレット・ラップトップとして使うというフォルダブルのスタンダードな2WAYのほか、セパレートしたディスプレイのキックスタンドを立てて横向きにしたことで、17inchの画面を存分に活かしたデスクトップモードにも早変わり。 『HP Spectre Foldable 17』はその名の通りの「フォルダブル」端末。使い方は大きく分けてタブレット・ラップトップとして使うというフォルダブルのスタンダードな2WAYのほか、セパレートしたディスプレイのキックスタンドを立てて横向きにしたことで、17inchの画面を存分に活かしたデスクトップモードにも早変わり。 ラップトップモードは12.3inchのディスプレイ。キーボードは画面半分に引っ付いているが、それをズラしてスクリーンモードにすることも可能。そうすると画面は14inchに。アプリも2画面で出すことが可能で、折りたたんで入れることもできる。 CPUが「第12世代 インテル® Core™ i7-1250U プロセッサー」と、このサイズ感にしては超ハイスペックで、インテルが規定した高性能ノートPCにのみ付与される「インテル® Evo™」のお墨付きもあり、セキュリティ機能も充実。カメラの方で人の動きを感知してオンオフを切り替えてくれたり、PCの前に座っているが隣の人と話している場合、PCを使っていないと察知してスクリーンを暗くしてくれたりもする。カフェでPCを使う際には周りの人たちに見られないよう、自動的にボカしてくれる機能もあったり、手のジェスチャーひとつでビデオを止めたりすることも可能だ。 また、パッケージは100%再生プラスチックを使用するなど、サステナビリティへの配慮も欠かさない。 続くオールインワンPCの『HP ENVY Move All-in-One』は、一言でいうなら”家のなかのあらゆるヒトやコトをつなぐPC”だろうか。その最大の特徴は“持ち運びやすさ”。約4.1kgの本体上部に持ち運び用のアームが、背面にキーボード収納用(しかも本体付属のキーボードはBT対応でタッチパッド搭載!)のポケットが付いており、最大4時間駆動のバッテリーもビルドイン。デスクトップは気軽に持ち運べないという常識を覆すモデルだ。 キックスタンドは持ち上げれば自動的に折り畳まれコンパクトになる仕組みのため、モニターを運ぶ際にもありがちな「スタンドをどこかにぶつける・引っかけるといった心配もない。 用途としては外に持ち運ぶには少し重量があるため、一定以上の広さの家で使うことが想定される。ペルソナは担当者が明言しているわけではないが、プロモーション映像などを見る限りは家族全員が使用することをイメージしていそうだ。携帯で見るには小さくて不満だった「YouTubeを見ながらヨガをする」というのも簡単だし、子どもの教育やリモートワークにも使える。仕事で使用する際に会社用のPCを持っているなら、『HP ENVY Move All-in-One』を外部ディスプレイとして使用することも可能。リビング、キッチン、ワークスペース、寝室でもマルチに活躍してくれるのだ。 ここからは製品発表会とは別で行われたKoh氏のインタビューを引用しながら、2製品のねらいやHP社のスタンスについて書いていこうと思う。 まず、今回シドニーで発表イベントを行った経緯については、新型コロナウイルスのパンデミックによって、プロダクトに直に触れてもらう機会が減り、大々的なマーケティングができなくなってしまっていた数年間を経て、あらためてAPAC(アジア太平洋圏)向けのイベントを打つ必要があると考えたからだそう。 1987年から米テキサス州オースティンで開催されている『SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)』がシドニーで初開催ということもあり、世界からクリエイターが集まるSXSWシドニーでの発表を決めたということだ。 世界の動きをみていくと、パンデミック前のPC市場はグローバルで年間2億5,000万台くらいの売り上げで、最も売れた年は3億5,000万台とのこと。この特需を経て、Koh氏は「仕事、生活、娯楽にとってPCがいかに重要かを理解した」と話してくれた。そして現在は「2年前のピークから、ある程度落ち着いた状況にある」という。 とはいえパンデミック以前よりは需要が高まっており、PC市場は拡大しているが、日本市場はどうだろうか。Koh氏は「日本はゲーミングPC市場が拡大している」ことに注目しており、ほかにはデータの増加やAIの普及などで大型PCの需要が高まっていることも気になっているようだ。 ここ数年の変化としても大きい「クラウドコンピューティングの普及」について、Koh氏は「クラウドコンピューティングは今後も活躍するテクノロジーだが、ローカルな環境でPCに内蔵するAIが処理する場合、クラウドコンピューティングの5倍相当の速度があるため、共存していくことになるだろう」との見立てを提示してくれた。 Intel社はAIを搭載したチップセットの開発を進めているとアナウンスしているが、それについては「CPUの反応速度を向上させたり、ニューラルプロセスを活用したり、そうしたことを実行できるAIが入ったチップセットの需要は高まっていくし、そうなるにつれて価格も抑えられる可能性があるが、それが具体的にいつかは話せない」と含みを持たせた。 また、日本円で798,600円(税込)からとなる『HP Spectre Foldable 17』の価格について、Koh氏は「フォルダブルのため、両サイドのバッテリー重量を均一にしたり、タブレットとしても使えるように一般的な配置から利便性を重視して変更したベゼルの両脇配置など、他の会社が持っていないHP独自の技術・アイデアを使った製品のため、価格は適正だと思っている」と語った。たしかに2WAYデバイスならまだしも、先述した4WAYデバイスでハイスペックかつ前例がないとなると、これくらいの価格帯になるのは必然なのかもしれない。 先述した「パーソナルコンパニオン」は、10月上旬にアメリカで開催された『HP Imagine 2023』でも提唱されていたことから、同社が重きを置いている価値観であることが伝わってきた。そして今回発表された2製品などを通じて感じたのは、同社が“ただ性能のいいモノ”ではなく“生活を豊かにする良いモノ”を作ろうとしていることだ。次回の記事では、それをより強く感じた『SXSW Sydney 2023』のカンファレンスなどでキーパーソンたちが話したことについて触れていきたい。 [link_card post_id="1464349"]
中村拓海