【田村藤夫】1軍でも通用する球威を持ちながら金久保優斗が逆球に苦労する理由とは
【186】<ファームリポート:ヤクルト5-1楽天>◇3日◇戸田 先発したヤクルト金久保優斗投手(24=東海大市原望洋)の立ち上がりに注目した。1軍で活躍できるボールがあるだけに、初回先頭打者への逆球の多さがとても気になった。 ◇ ◇ ◇ 先発金久保と聞いて、なかなか1軍に定着できないんだなと考えながら、立ち上がりのピッチングに注目していた。いいボールは来ていた。最速151キロの真っすぐは力があり、これなら1軍でも十分に通用するだろうと。 それは球速だけではなく、スピードガンでは表れないボールの強さがスタンドからでも感じられたからた。まだ若く、これだけのボールがあるのになあと、思わずにはいられなかった。 そんな感想を抱きながら見ていると、先頭打者相手に8球のうち5球が逆球だった。その逆球は、スライダーが2球、真っすぐが3球。荒れてるな、と言えば、もともと制球がある投手がたまたま調子が悪くて制球を乱しているように聞こえるかもしれないが、金久保のケースは少し違う様に感じた。 打者を重ねるごとに、制球を取り戻して行った。つまり修正力はある、ということだ。それは金久保自身が乱調時に、なにがしかのチェックポイントを把握しているからだろう。少なくとも、先発して3回を投げた内容からして、私にはそう見えた。 そこで感じることは、2軍で修正能力を発揮することは大切だが、1軍で戦力になるには、この日の立ち上がりの内容ではちょっと心もとない、ということだ。 逆球にもいろいろあるが、例えばこの日のようにストライクゾーンの中での逆球は非常に危険だ。外を狙ったボールが内角に甘く入ると致命的だ。2軍では仕留められなかったが、1軍では甘く入った逆球は見逃してはくれない。 仮に1軍で先発したとして、この日のような立ち上がりで、甘い逆球を連発していては、一気に畳みかけられ、序盤で失点を重ねる可能性をはらむ。 つまり、具体的に言うなら、逆球でも外角を狙ったボールが、打者が避けるくらいに大きく内角に行くほど荒れていれば、それが奏功するケースはある。さらに言うなら、抜けるボールが散見されたが、抜ける逆球を連発するなら、反対にひっかける意識で、意図的に指のリリースポイントを工夫してみるのもひとつのやり方だ。 外角を狙ったボールが真ん中に甘く入ったり、内角を厳しく突こうとしたボールが外寄りに甘くなっては、長打につながり一気に大量失点で試合を壊してしまう。 打者を重ねるごとに少しずつ修正していくことは決して悪いことではないが、金久保の球質は1軍でも十分に通用することを考えれば、立ち上がりでの危険な逆球は少なければ少ないほどいい。そこは金久保にとって大切な課題だと感じた。 この日のようにストライクゾーンに甘い逆球があって、長打を浴びなかったのは、ボールに力があったからだろう。それも2軍の打者の仕留める力が、金久保の球威に負けていたに過ぎないと言える。 2軍であっても、1軍マウンドを常に意識して、調子が悪かった、調子が良かったという表面的な尺度ではなく、調子が悪い時に、どうすればいち早く修正できるかを常に念頭に置いて、大切な実戦のマウンドを経験して行ってほしい。 (日刊スポーツ評論家)(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「田村藤夫のファームリポート」)