<頂点へ再び・22年センバツ敦賀気比>/下 神宮の教訓「個」の向上 /福井
昨秋の北信越地区大会を制覇し、2年連続9回目の「春切符」を獲得した敦賀気比。勝ち進むごとに成長を見せ、経験不足という課題を乗り越えて北信越の王座を守った。だが、昨年11月の明治神宮野球大会では、初戦で大阪桐蔭に4―8と敗北。夢の「日本一」を前に次なる壁が立ちはだかり、選手らはセンバツでのリベンジに燃えている。 「攻守で実力の差を感じた。打ちたい場面で打たせてもらえなかった」。大阪桐蔭戦の敗戦を、選手らはこう振り返る。打撃面では四回に登板した相手投手の速球も変化球も捉えきれず、三振を重ね、この回以降二塁を一度も踏めなかった。守備面でも、先発した投手の上加世田頼希主将(2年)は「一球でも甘い球を投げれば打ち込まれた」と力不足を実感したようだ。 収穫もあった。初回に先頭打者の濵野孝教選手(1年)が二塁打を放つと、2番の河合陽一選手(2年)も出塁。次の打者は併殺に沈むも濵野選手が生還し、狙いだった上位打線3人での得点に成功。その後逆転を許したが、三回には攻撃がかみ合って再びリードした。東哲平監督は「チームの現在地を知る機会と思って臨んだ試合でコールド負けも覚悟したが、一時逆転したことは評価できる」と一定の満足感を示す。 選手らが差を感じたのは「個の力」だ。体格が一回り大きな選手たちが、隙(すき)を見逃さず攻め込んでくる。逆にこちらが攻め込む隙を相手投手陣は見せなかった。選手らは全国トップクラスとの差を肌で感じ、現在はおのおのが自身の課題と向き合う日々を送っている。 岡村颯樹選手(2年)は大阪桐蔭戦の三回表1死満塁で、外角の変化球を当てにいってゴロになり、追加点の好機をものにできなかったことを反省。打撃時のボールの見極めをしっかりできるようになるため、通常の半分の距離から投げられた球を打つ練習を繰り返す。半分の距離から投げられたボールはストライクゾーンに届くまでの時間が半分程度になる。短くなった時間で、スピードや変化を見極めた上で打てるよう、選手たちは集中力を研ぎ澄ましている。 上加世田主将はウエートトレーニングで下半身を強化するなどし、球速向上に努めている。「大阪桐蔭戦の終盤は相手の方が断然球威が上だった。まだまだ自分の投球に満足していない」と、目標の日本一を見据えて闘志を燃やす。 北陸特有の天候が不安定な冬場、選手らは屋内での個人練習で基礎力強化に励む。上加世田主将に次ぐ2番手投手の台頭や打撃陣の成長を、東監督は心待ちにしている。「『ここまでレベルアップしたか』と驚かせる選手が出てきてくれたらと思う」。2度目のセンバツ制覇に向けて、気の抜けない日々が続く。【大原翔】