杉田協士監督×小川あん主演『彼方のうた』予告編公開 大九明子、原田マハらのコメントも
2024年1月5日より全国順次公開される杉田協士監督最新作『彼方のうた』の予告編が公開された。 【写真】主演を務める小川あん 本作は、短歌を原作として製作された『ひかりの歌』『春原さんのうた』を監督してきた杉田にとって、デビュー作『ひとつの歌』以来12年ぶりとなるオリジナル作品。 助けを必要としている見知らない人のことを思い、手を差し伸べ、丁寧に関係を築いていこうとする書店員の主人公・春を演じるのは小川あん。そして、春が自分自身と向き合うきっかけとなる雪子役を中村優子、剛役を眞島秀和が演じる。 また、新たにKaya、野上絹代、端田新菜、深澤しほ、五十嵐まりこ、荒木知佳、黒川由美子、金子岳憲、大須みづほ、安楽涼、小林えみ、石原夏実、和田清人、伊東茄那、吉川愛歩、伊東沙保の出演が発表された。 書店員の春(小川あん)は、駅前のベンチに座っていた雪子(中村優子)に道を尋ねるふりをして声をかける。春は雪子の顔に見える悲しみを見過ごせずにいた。一方で春は剛(眞島秀和)の後をつけながら、その様子を確かめる日々を過ごしていた。春にはかつてこどもだった頃、街中で見かけた雪子や剛に声をかけた過去があった。春の行動に気づいていた剛が春の職場に現れることで、また、春自身がふたたび雪子に声をかけたことで、それぞれの関係が動き出していく。春は2人と過ごす日々の中で、自分自身が抱えている母親への思い、悲しみの気持ちと向き合っていく。 映画『彼方のうた』予告編 公開された予告編では、春が剛に対して“ある秘密”を打ち明けるシーンや、春と雪子がキッチンに並んで料理をするシーンなどが収められている。 また、映画監督の大九明子、作家の原田マハら、本作を鑑賞した著名人7名からコメントも到着した。 なお、公開初日の翌日2024年1月6日には、池袋シネマ・ロサ、ポレポレ東中野、渋谷シネクイントの3劇場にて公開記念舞台挨拶の実施が決定。杉田監督、小川、中村、眞島が登壇する予定だ。 【コメント】 ●大九明子(映画監督) どうやら杉田監督は、自分の映画の中の美味しそうなお店に朝だろうが深夜だろうがしょっちゅういるらしい。ずるい。スクリーンの向こうとこちらを行ったり来たり。その感覚だけは私たち観客にも許されているからありがたい。だから何度も観たくなるんだと思います。そうやって酔わせてもらっていたけれど。ラスト、雪子さんが春さんに向けて言うセリフにはっとさせられます。春さん、あなたって人はもうホントに。 ●丘田ミイ子(文筆家) 雪子の存在を掬い上げるようにオムレツを頬張る春、春が食べ始めるのを見届けてから箸を進める雪子。重ねられていく食事のシーンに、いくつもの優しく寂しい横顔をみた。笑ったらいいのか、泣いたらいいのかわからない顔をしなが ら人が人に手を差し伸べるとき、差し伸べられるそのとき、はじめて「独り」は「一人」になるのかもしれない。画面の向こうで、街や家や店の中で、互いを縁取り合うように生きる人々を見てそんなことを思っていた。さみしくて、やさしくて、泣きそうになって、笑いそうになって、自分も時々こんな横顔をしているのかもしれない、と思った。 ●羽佐田瑶子(ライター、編集者) 春さんの足取りや感覚が、ときどき自分と重なった。人に作ってもらったものを食べると、自分の存在がたしかめられたような気がした日のことを。映画を観終えた帰り道、ふと思い出して窪美澄さんの『夜に星を放つ』を読み返した。やるせなさみたいなものは拭えないけれど、それでも、友人と話したりごはんを食べたりしながら、生きていくことを私が選ぶ。杉田監督の作品を観るとそうしたことをしばらく考えてしまう。 ●原田マハ(作家) 何も語らないことが、すべてを語ることにつながるのだと、本作に教えられた。 書くことで語り尽くすさだめの私には、新鮮な体験だった。 ●東直子(歌人) 小川あんさんの大きく見開いた目は、こちらをまっすぐに向いているけれど、決してこちらを見ていないようで、怖かった。だから、彼女が発する優しい声に少し震えた。この人の胸の裡(うち)が知りたい。でも見えない。周りにいる人も震えているのが分かる。 映画の中で主人公が朗読する私の絵本『キャベツちゃんのワンピース』は、娘の理解できない行動を、あるとき深く受け入れる母の物語なのだが、これを使っていただいた杉田監督の意図が、ラストに来てぐっと迫ってきて胸が強く締めつけられた。 それぞれの孤独な後ろ姿が美しい。 ●穂村弘(歌人) 異様なほど静かな画面から、溢れ出した命の輝きが、こちらに向かって流れてくるのを感じていた。 ●森井勇佑(映画監督) すごく面白かったです。映画が始まってから終わるまでずっと面白かった。張りつめた感覚がずっと持続しているように思いました。これほど持続している映画は稀だと思います。もう2回見ましたけど、何度でも見たいです。人が人を気にかけるというシンプルなことが、これほど映画を豊かにさせるのかと、とても驚きました。素晴らしい映画です。
リアルサウンド編集部