エレンたち、幼なじみ3人組の視点からシリーズを振り返る!『劇場版「進撃の巨人」完結編』で描かれたそれぞれの選択と結末
遂に、エレンたちの長き戦いの物語が、真の終結を迎える。2023年3月4日、同年11月5日の2回に分けて放送されたTVアニメ「進撃の巨人 The Final Season 完結編」を145分に編集した『劇場版「進撃の巨人」完結編 THE LAST ATTACK』がついに公開! 【写真を見る】自由を求め進撃を続けたエレン、アルミン、ミカサたちの歩みから振り返る!「進撃の巨人」が遺したものとは? 今作を「総集編」と侮ってはいけない。エレン(声:梶裕貴)を軸にし、彼の苦悩や悲しみ、悲壮な決意と深い愛がより明確に伝わり、結末を知っているのにも関わらず、冒頭から震え、滾り、15分に1回は涙ぐむ一本となっている。 本稿ではそんな本作をより楽しむために、幼なじみ3人組のエレン、ミカサ(声:石川由依)、アルミン(声:井上麻里奈)、それぞれの立場から「進撃の巨人」における最終決戦、“天と地の戦い”の見どころをまとめて紹介!劇場の迫力ある映像と音と共に、我々が共にみた11年間に渡る長い夢が覚める瞬間を、見届けよう。 ※本記事は、ストーリーの核心に触れる記述を含みます。未見の方はご注意ください。 ■孤独な戦いに身を投じていくエレンの真の目的とは ウォール・マリア奪還作戦を成功させた英雄として表彰され、王家の血を引くヒストリア(声:三上枝織)の手を取った瞬間、エレンの世界は逆転した。アルミンと夢見た、人類未踏の地が広がる天国は壁外人類が繁殖する地獄へ、自由な世界へ羽ばたく希望が不自由な現実にがんじがらめになる絶望へと変わることを知ったときから、エレンは“ある未来”に辿り着くために、あえてアルミンやミカサたちを突き放し、孤独な戦いに身を投じていく。 劇中、“あの木の下”で居眠りをしてミカサに起こされた、懐かしい故郷の風景から始まる、エレンの罪の告白。自らが命を踏みにじることになる少年に向かって、号泣しながら「ごめんなさい」と繰り返す彼が、なぜ“地鳴らし”を発動させたのか。進撃の巨人の力で未来の記憶を視たエレンは、そうするしか、自分が愛するパラディ島の人類を守る手段がないと考えたからだ。そしてそれが、自分の“使命”であることも。 実は“地鳴らし”は、アルミンたちを“ある未来”へと誘導するためのスタート地点だった。それが、どこまでも広がる一面の空を見て、「ようやくここまで来た」という言葉の真意だろう。だからエレンが、少年のような無邪気な顔で「な、アルミン」と振り返った瞬間、戦いの火蓋は切って落とされる。 ただすべての物事が、エレンの思い描いた通りに進んだわけではない。アルミンを生かす選択をしたのは、巨人の意志や記憶に影響を受けないリヴァイ・アッカーマン(声:神谷浩史)個人の判断であったし、最終的にエレンどうするのかという決断も、アッカーマンの血を引くミカサに委ねられた。真の意味で自由であるふたりの個の意志こそが、未来を切り拓く自由の翼になるという壮大な伏線の回収は、見事としか言いようがない。 “終尾の巨人”となって壁の巨人たちを率い、粛々と滅亡の行進を続けるエレン。“地鳴らし”は本当に彼の自由意志が選んだことだったのか。それとも、王の意にも従わぬ自由意志を持ち、いつか自分たちが救われる未来が来るという希望にすがって1000年以上もの間能力を継承し続けた “進撃の巨人たちの意志”なのか。ラストバトルの中で少しずつ明かされていく彼の心の叫びを拾っていくと、エレンという少年の姿がまた違って見えるかもしれない。 ■諦めずに語りかけ続けたアルミンの矜恃 アルミンは“ネゴシエーター”である。言葉が通じる者であれば、殺し合いをする前に話し合いを持ちかけ、相手が応じるまで諦めずに語りかける。そして対話で物事を解決すべく、相手を理解しようと力を尽くし、粘り強く会話を重ねる。人に対して努めてフラットな立場で接し、周囲の状況を見ながら、慎重に相手との距離を縮めて活路を見出す力があるし、最悪の場合は実力行使しかないという腹のくくり方もよい。その交渉のうまさは、巨人化したエレンを憲兵から守ったことでも証明されている。 エレンが何も話さずに行方をくらましたときも、エレンの身勝手な行動でマーレとの戦いに調査兵団を巻きこんだときも、アルミンはエレンが話してくれるのを辛抱強く待った。きっと自分たちに明かせない理由や、考えがあるだろうと。しかし、パラディ島がイェーガー派と反イェーガー派に分裂して争いが始まり、ようやくエレンと話す機会ができたと思ったら、当のエレンは聞く耳を持っていなかったのは、アルミンにとってショックな出来事だっただろう。 ましてエレンは、自分だけでなくミカサの恋心を踏みにじって傷つけた挙げ句、手の届かないところまで行ってしまったのだ。これは親友として絶対に許せることではないし、なぜそんな行動を取ったのか、エレンの口から説明を聞くまで納得できない。だからこそ地鳴らしを止め、終尾の巨人からエレンを引きずり出して、対話をする――徹頭徹尾、アルミン・アルレルトらしい選択と行動には、本当に胸が熱くなる。だからこそ、初っぱなに彼の最大の武器である“口”を封じた“オカピっぽい巨人”を巡るミカサたちの奮闘を、心の底から応援することができるのだ。 エレンを止められるのは、アルミンたちしかいない――そう信じて、飛行艇を飛ばすために尽力したアズマビトたち、その飛行艇を守って散ったハンジ(声:朴ロ美)、決死の覚悟で終尾の巨人に送り届けてくれたオニャンコポン(声:樋渡宏嗣)。共に戦うリヴァイ(声:神谷浩史)、ジャン(声:谷山紀章)、コニー(声:下野紘)、ライナー(声:細谷佳正)、ピーク(声:沼倉愛美)。援護にかけつけた、アニ(声:嶋村侑)、ファルコ(声:花江夏樹)、ガビ(声:佐倉綾音)。そして、これまでの戦いで命を落とした多くの人たち。 みんなが命懸けでつないだチャンスをものにした末に到達した場所でのエレンとの再会で、ほぼすべての疑問に答えが出るはずだ。そして、エレンを殴りつけた拳に込められた、アルミンの想いを感じてほしい。 ■エレンを求める一心で戦うミカサの愛 「オレはずっと、お前が嫌いだった」――エレンからそう告げられたミカサ。エレンを好きな気持ちはアッカーマンの血のせい、幼少期から頻繁に起きる頭痛は命令に逆らう本能のせいだとエレンに強く言われて憔悴してしまう。自分の心がわからなくなったミカサは、一度は大切にしていたマフラーを置いて戦闘に出るが、アルミンに「どうしたい?」と問われ、「遠くに行ったエレンを、連れ戻したい」という気持ちを吐露。再びエレンが巻いてくれたマフラーを手にし、地鳴らしを止めるために出発する。 思い返せば、ミカサの戦いは最初から“エレンを守る”ためだった。幼いころに強盗犯を殺したときからずっと…。“守るもの”がある人間は強い。苛烈極まる天と地の戦いの中で、エレンを求める一心で戦うミカサ。その姿を、彼女の選択を見届けた瞬間、2000年間妄執のような己の愛に囚われていたユミルは、何を思うのか? ずっと想っていたのに、いざとなったらなにも言えない奥ゆかしいミカサの愛は、エンディングに流れる石川由依が歌う「二千年...若しくは...二万年後の君へ…」に織り込まれている。劇場版はオープニングがない。劇伴もハンジの死以外、不思議なほど印象に残ることなく、鳴りを潜めていた。だからなのか、「二千年...若しくは...二万年後の君へ…」がより胸に迫る。 そして、同時にスクリーンに映し出される、呆れるほど学習しない人類の所業を見ながら、11年間「進撃の巨人」を追ってきた過去をぼんやりと思い返した。冒頭のマーレの港シーンを見た瞬間、ちょうど1年前の2023年11月5~8日にオンラインで開催された、「TV アニメ放送完結記念『進撃の巨人』ワールドワイド・アフターパーティー」で楽しんでいた気分を思い出したときとは真逆の、虚脱感。そして、現実に戦争が起きている世界で、お前はなにをするのかと問われているような感覚。そしてたぶん、自分にはなにもできないという諦め、失望。そんなふうに思いを巡らせていうちにEDが終わり、劇場版で新たに追加されたポストクレジットシーンが流れ、まるで自分の心を見透かされたようで驚いた。 登場したのは、本作を見終わったばかりのエレンとアルミン、そしてミカサ。興奮した様子で考察する陰キャオタクのアルミン、そんなアルミンと言い争いを始めるゴスロリミカサ。そして「お前らと観れてよかった」と笑うエレン。この映画の余韻を逆の意味で吹き飛ばすインパクトのおかげで、多くの人がきっと、長い夢から目が覚めるだろう。人は忘れる生き物だからこそ、未来に向かって進めるのだから。 ※朴ロ美の「ロ」は「王へんに路」が正式表記 文/ナカムラミナコ
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