『ブギウギ』水上恒司演じる愛助の“嘘”に胸が痛くなる スズ子を励ますりつ子の衝撃事実も
スズ子(趣里)がお腹に赤子を抱えながら挑んだ舞台「ジャズカルメン」は順調の滑り出しを見せていたが、一方で愛助(水上恒司)の具合は日に日に悪くなっていくばかりだった。『ブギウギ』(NHK総合)第83話では、そんな愛助の事情を知る由もないスズ子が舞台の千秋楽に向けて準備を進める。 【写真】明日の第84話先行カット 起き上がれない愛助(水上恒司) 羽鳥善一(草彅剛)が手掛けた舞台「ジャズカルメン」はオペラのジャズミュージカル化という初の試みにもかかわらず、スズ子の努力の甲斐あって大盛況で幕を開けた。だが、ゴシップ記者の鮫島(みのすけ)が出した記事をきっかけにスズ子が妊婦ではないか、という噂が広まり始め、記者たちがこぞってスズ子を取り上げる。その中には「腹ぼてカルメン」というスズ子を揶揄した記事もあった。これは推測にはなるが、きっと記事を書いたのは鮫島だろう。「腹ぼて」や「父無し子」など時代背景が表現されている言葉とはいえ、なんとも下品極まりない。 一方で、大阪で療養を続けていた愛助は「ジャズカルメン」を観るために東京に行きたいと医師に告げるが、症状は悪くなるばかりで当然医師からの許可は出るはずもない。「そこをなんとかなりまへんか」と頭を下げるものの、医師からは「辛抱のしどころです」と言われてしまう。 その後、愛助は手紙の中で風邪を引いてしまったことを理由に東京へ行くことができなくなったとスズ子に伝える。もちろんその言葉は嘘ではあるが、愛助なりのスズ子への配慮だ。スズ子の大ファンであり、恋人でもある愛助にとってスズ子の勇姿を見られないことはどれだけの悲しみだろうか。どんな感情でこの手紙を書いたのかを想像すると胸が痛くなる。本当は泣き言でも言いたかったかもしれない。 もちろん、悲しかったのは愛助だけではない。スズ子も同じだ。「会いたかった。会いたかった」ーースズ子の手紙にはマイナスな言葉ばかりが並んでいる。それはかつて弟の六郎(黒崎煌代)に向けて歌った「大空の弟」のようなもどかしいやりとり。スズ子は手紙にはしたためてはいないが、口からこぼれ出た「愛助さん、この子ホンマに怒ってますよ。ワテも怒ってますで」という言葉が本当に伝えたかったセリフだろう。 舞台公演の前にスズ子のもとにやってきたのはりつ子(菊地凛子)。心配するでもなく「妊婦がどんな踊りをしているのか見に来てあげたのよ」とりつ子節全開なのがなんとも微笑ましい。だが、りつ子はスズ子をからかうためだけに来たわけではなかった。りつ子は「私子ども産んでいるのよ」と衝撃的な事実を口にする。 10歳になる子どもは現在は田舎の母親に預けており、父親は子どもが生まれる前に家を出ていた。歌を歌うために自分の手で子どもを育てられなかったことが唯一の後ろめたさだとりつ子は語る。だからこそ、りつ子は歌に命をかけていた。言葉こそ悪いけれど、りつ子は子育てと歌手の両立の難しさを知っているからこそ、妊婦としてステージに立つスズ子をリスペクトしていた。あえて言葉にしないあたりがりつ子らしい。 千秋楽を無事に大成功で終えたスズ子だったが、まだ気がかりな愛助のことが残っている。手紙ではなく、ハガキで簡潔な文面が綴られていたのも心配だ。愛助に何事もないといいのだが。
川崎龍也