田中圭が体現してきた“父親像” 『わたしの宝物』では“ミリ単位の表情変化”を披露
田中圭が“優しさ”を封印した『哀愁しんでれら』での怪演
一方で、映画『哀愁しんでれら』では、ぞっとするような夫/父親として、その優しさを封印した田中。怒涛の不運に襲われていた小春(土屋太鳳)の“王子様”となり、再婚する医師・大悟を演じている。幸せな生活を描く一方で、彼の変わった趣味や娘ヒカリ(COCO)の奇妙な行動などが次第に明らかになっていく、恐怖が滲む作品だ。大悟には狂気的な不気味さが内在しているが、彼の感情が爆発した瞬間に、娘への愛でいっぱいであることがよくわかる。子に対する愛情のベクトルは、人によって違うのだ。 どのような性格で、どのような境遇の父親であっても、子供への愛は計り知れない。田中圭は、そんな言葉では伝えきれない愛を、役の性格に合わせて、表情だけでなく全身の細胞レベルで表現できる俳優と言える。親になるという気持ちはどういうものか、まだ体験したことがなくても、彼の演技を見ればわかる。その喜びと優しさと痛みが入り混じった“愛”が『わたしの宝物』でも体現されているのだ。一体、血のつながらない栞との日々を選択した宏樹は、これからどのような人生を送ることになるのだろうか。 参照 ※1. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000008.000026876.html ※2. https://realsound.jp/movie/2024/11/post-1836921.html
伊藤万弥乃