ブルーノ・ムナーリの名言「豪華さは、貧乏な人を…」【本と名言365】
豪華さは、貧乏な人をびっくりさせようとする野蛮な豊かさの表れである。 生涯を通じて遊び心が見える作品を作り続けた美術家ブルーノ・ムナーリ。『役に立たない機械』などの実験的な作品を発表しながらも、息子が誕生してからは子供のために創造性を育む仕掛け絵本10作品も作るなど、教育者としても熱心に活動を続けた。彼の絵本は子供たちだけでなく大人にも親しまれ、その革新的なデザインとインタラクティブな作品は今日でも多くのデザイナーやアーティストに影響を与え続けている。 【フォトギャラリーを見る】 問題を解決するために必要なステップを経て、形にしていくことが「デザイン」であり、単に見た目を整える「スタイリング」とは異なる、とムナーリは語る。単に豪華さを演出し、見た目のみを重視することを激しく非難。本書では蛇口の改良を例に挙げ、それを金で作るよりも同じ費用を使って浄水器を取り付ける方がよっぽど賢明だと説明する。彼にとっては「豪華さとは、高価な素材を間違って使うこと」なのである。ムナーリは、そんな誤った豪華さを褒め称えて羨ましがる人を「無知な人」、無知な人からの賛辞を気にする人を「愚か者」と称し、「豪華さとは、じっさい愚かさの表れなのである」と言い切る。 ムナーリは多くのデザイナーが見た目の美しさだけを追いかけていることに警鐘を鳴らす。 デザイナーは聴覚や触覚など、全ての感覚に働きかける企画設計をするべきであり、「見た目で気に入っても、他の感覚で気に入らなければ、製品としては不合格」とムナーリは説く。 本書『モノからモノが生まれる』はデザインにおける企画設計の基本的な手順と、新しいアイデアが生まれる為の方法論を解説する。長年活動してきたムナーリの洞察から、よくできたデザインや失敗例が多数例示されている。デザイナーに限らずとも読者は、この本に書かれる企画の方法論が問題を解決するための強力なツールであることを理解できるだろう。
ブルーノ・ムナーリ
1907年イタリア・ミラノ生まれ。未来派の運動に共鳴し、絵画や彫刻を制作。グラフィックデザイナーとして雑誌の編集に関わる一方、子どもの誕生以降は仕掛け絵本の作家としても活動し、「本以前の本」である『I PRELIBLI』などの作品を発表した。詩人・美術評論家の瀧口修造と出会って以降は日本を何度も訪れ、日本の洗練された美意識に影響を受ける。『ファンタジア』(みすず書房)『芸術としてのデザイン』(ダヴィッド社)など著書等多数。
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