渋沢栄一のドキュメンタリードラマ36年ぶりに公開 博覧会の「展示映像」ビデオを基にデジタル化
7月に発行される新1万円札の肖像画となる実業家渋沢栄一(1840~1931)の生涯を描くドキュメンタリードラマが、福岡市で8、9日、36年ぶりに公開される。渋沢の出身地の埼玉県であった「’88さいたま博覧会」(1988年)で上映されたもので、会期後にフィルムは廃棄されていたが、福岡市の団体がビデオテープを保管しておりデジタル化、上映に至った。 日本の資本主義の礎を築いた渋沢栄一の経営哲学の柱には論語があった 豪農の家に生まれた渋沢は幕末に一橋家に仕え、明治時代に実業界で活躍。銀行や製紙、紡績、鉄道など多くの企業設立と経営に関わった。北九州の築港会社や鉄道会社にも投資。製鉄、炭鉱業の基盤づくりに関わった。 映像は「未来への挑戦~渋沢栄一物語~」(16分)。再現ドラマと渋沢本人の写真や動画を組み合わせ、3面のスクリーンに映す実験的な作品だ。監督の川北紘一(1942~2014)は「ゴジラVSキングギドラ」などの特技監督として知られる。 ビデオテープを保管していたのは、九州大名誉教授の脇山真治さんが代表理事を務める一般社団法人「展示映像総合アーカイブセンター」(福岡市)。脇山さんは同大芸術工学部教授時代から、国内外の博覧会で上映された「展示映像」の調査と保存、デジタル化に取り組んできた。同センターは活動を継続するため、九大を退職後の21年に設立した。 脇山さんによると、博覧会の展示映像は先端の技術や人材を用いる貴重な作品である一方、上映の期間や場所が限られるため、公開が終わると会場ごと破棄されたり、行方不明になったりすることもある。脇山さんは「そもそも保存されない映像なので、再上映は非常にまれなこと」と話す。 当日はプロジェクター3台とスクリーン3面(横約7・2メートル)を使い、36年前と近い環境を再現する。福岡市博多区の福岡アジア美術館8階あじびホールで、8、9日とも午前11時から十数回上映。無料。8日午後3時からの上映後は脇山さんが講演する。主催の九大芸術工学図書館=092(553)9490。 (諏訪部真)