理想の母親?『おむすび』第11週で見えた、愛子(麻生久美子)の人間性と家族観
現在放送中の連続テレビ小説『おむすび』(総合・月曜~土曜8時ほか)。11月9日(月)~13日(金)放送の第11週「就職って何なん?」では、結(橋本環奈)が翔也(佐野勇斗)の職場・星河電器で栄養士として働くことが決定。それに伴い、4週にわたって放送された専門学校編が幕を閉じた。 【写真】愛子(麻生久美子)の人間性と家族観が見えた『おむすび』第11週【4点】 沙智(山本舞香)とのすれ違いや翔也からのプロポーズ、炊き出し隊長として震災に向き合ったりと、盛りだくさんだった専門学校編。その中で個人的に注目していたのが、母・愛子(麻生久美子)の存在だ。朝ドラヒロインの数だけ“母”も存在するわけだが、愛子は歴代の母たちの中でも極めて控えめ。それは「気が弱い」や「夫の言いなり」というわけではない。基本的に何に対しても「ご自由にどうぞ」スタイルで、必要なときにだけサッと手を差し伸べる縁の下の力持ちタイプなのである。 第54回では愛子ママの計らいでハギャレンたちが神戸にサプライズ集合。就活に悩む結のリフレッシュになるはず、と気が利いた行動に視聴者からも「さすが愛子さん」と称賛の声が集まっていた。「お母さんが呼んでおいたよ」と一言付け加えていないのもミソで、ただ結に元気になってほしい、喜んでほしいと真っ直ぐな親心からの行動だったのだなと伝わってくる。 ハギャレンたちも米田家でパラパラの練習をしたことや、ルーリーの危機に愛子が駆けつけてくれたことがずっと心の中に残っていたからこそ、愛子の頼みをOKしたのだろう。愛子とハギャレンたちのつながりにもグッときてしまった。 愛子の「ご自由にどうぞ」スタイルはかなり徹底されている。結の「書道をやりたい」「ギャルをやりたい」という願望をすべて「いいんじゃない」と背中を押しただけではなく、歩が海外を飛び回り何をしているのか分からない状態でもあまり気にしていなさそうだ。 栄養学校の初日、ギャル姿で登校する結のことも「そんな格好やめときなさい」とは言わなかった。我が子が失敗しそうでも、恥をかきそうでも先手を打たずに見守る。一旦好きなようにさせておく。子どもを自分の所有物にせず、いい意味で一線を引いて接する愛子の姿は理想の母親といえるかもしれない。 また愛子は結婚後、糸島でも神戸でも聖人と一緒に働き続けている。第53回での「床屋さんも農業も好きだからやってただけ」というセリフを聞いたとき、愛子自身の夢はなかったのだろうか?と気がかりだった。だが、もしかすると愛子は「聖人のことが好き」「家族のそばにいたい」…そんな思いで床屋や農業をやっていたのではないだろうか。結の夢が「彼氏を支えること」であったように、愛子の夢は「家族を作ること」「好きな人のそばにいること」だったのかもしれない。 愛子が持っている家族観には、自分自身の父・母の存在が大きく影響しているはずだ。しかし愛子の両親はこれまで全く登場しておらず話題にも上っていない。実家に帰っている様子や連絡を取っている様子もないため、縁を切っている、勘当されている可能性も考えられるだろう。また愛子が名古屋でスケバンをしていたというのは糸島編で明かされているが、その後神戸に家出してきた理由や聖人(北村有起哉)との詳しい馴れ初めはまだ分かっていないのだ。 愛子がどんな過去を経て今の“母”の姿になったのか、どんな思いで“米田家”の一員になったのか。今後も愛子の言動に注目していきたい。
音月 りお