アリスの堀内孝雄（74）と矢沢透（75）が、たくさんの思い出が詰まった日本武道館（東京都千代田区）のステージに立ち、力強い歌声と演奏で昨年10月に74歳で死去したリーダー、谷村新司を送った。9月18日に開催した「ALICE　FOREVER　アリガトウ」公演。「アリガトウは、谷村さんの奥さんが選んだ。僕らの思いでもある」（堀内）という。 ■無人のマイクスタンド 駆けつけた7800人のファンが開演前から手拍子を打ち続け、熱気が充満する中、下手袖からバンドメンバー、そして矢沢、堀内が舞台に現れた。始まった1曲目が「冬の稲妻」、続いて「今はもうだれも」。かつて谷村と堀内のツインボーカルで聴かせた代表曲だ。 この日、歌っているのは堀内だけ。しかし、谷村の立ち位置だった上手側にはマイクスタンド。主はいないが、下手側の堀内、中央後方の矢沢と永遠のトライアングルを形作っていた。 昔聴いたレコードで矢沢のドラムは軽快さが身上と記憶していたが、重いキックでヘビーなビートを繰り出し、アリスはロックバンドだったのだなと気づいた。 ■映像のチンペイ 「たった2曲でこんなに疲れるのか。皆さん、こんばんは。アリスです。チンペイ（谷村の愛称）さんの追悼の思いを込めて精いっぱいに歌いたいと思います」と汗を流しながらベーヤン（堀内の愛称）。 キンちゃん（矢沢の愛称）が「普段はここで、チンペイさんがメンバー紹介をするのですが、今日は僕が。永遠のリーダー、谷村新司！」と叫ぶと、舞台奥のスクリーンに過去のライブ映像のチンペイが映し出された。 そして映像のチンペイが「堀内孝雄！」とベーヤンを紹介し、会場は大きな歓声に包まれた。 「なんでお前は行ったんだ」。スクリーンのチンペイに語りかけたベーヤンは、「あれから1年を迎えようとしている。胸がいっぱいになりそうだ。今日は、皆さん、助けてください」と客席に声をかけ、「BURAI（無頼）」を映像のチンペイとともに歌い始めた。 真っ赤なベストのチンペイが主旋律。真っ黒のベストのベーヤンがハモる。