日本人はみんな「中島みゆき」が好き? デビューした1970年代から全年代で1位を獲得してきたワケ
これはもう、歌というものが持つ可能性の究極ではないだろうか。 『ファイト!』が初めて発表されたのは1983年(アルバム『予感』収録)。41年も前の歌なので、歌詞の時代背景が違う。しかし、「ファイト! 闘う君の唄を 闘わない奴等が笑うだろう」と歌うこの曲は、SNSが普及して顔も本名も知らない人たちから攻撃を受けることが多いこの時代だからこそ、響いてくるものがある。 仕事や学校、人間関係に悩み、コンプレックスや罪悪感に向き合いもがく誰かを、「w」(「笑」のネットスラング)を連打して笑ってくる人など気にしなくていい。それは闘わない人なのだから、と歌ってくれているように聴こえるのだ。
中島みゆきの楽曲が時代を超え、求められるのは、自分の心の叫び声と、とても似ているからだろう。 いつの時代も、嘲笑はなくならない。つらいこともなくならない。けれど、「ふるえながらのぼってゆけ」。 そう歌う中島みゆきは来年50周年。これからも変わらず、彼女が織りなしてきた、みっともないほどに本気でやさしい言葉は、巡り巡って心に届くだろう。
田中 稲 :ライター