「退職金を一気に投資する」のは危険すぎる…老後の資産づくりには「時間の分散」が必要だ
---------- 退職金やボーナスを「一括投資」して、大金を溶かしてしまう……。投資デビューする人が増える中、そんなケースが増えているという。そこで、新刊『ポートフォリオ・マネジメントで一生お金に困らない人になる! 』の著者・高衣紗彩氏に、「分散投資」の重要性と、その代表的な手法である「ドルコスト平均法」について解説していただいた。 ---------- 【マンガ】5200万円を相続した家族が青ざめた…税務署からの突然の“お知らせ”
「一括投資」は避けたい投資行動の筆頭
退職金や相続した大金を一気に投資することは、避けたい投資行動の筆頭です。なけなしの退職金を全部投入して失ってしまった、という話を耳にすることがよくあります。 それを避けるためにできることの一つが、「分散」です。動きの異なる(負の相関関係にある)複数の資産クラスに分散投資することで、一度に溶かす危険性を小さくできます。 分散にもさまざまな切り口があります。中でも時間の分散は、資産クラスの分散とともに、長期にわたり安定したリターンを確保できるとても有効な方法です。ここでは「時間の分散」のすごさを理解していただくために、「ドルコスト平均法」について詳しく説明しましょう。 ドルコスト平均法とは、定期的に一定額の投資を行うことで、購入コストを可能な限り最小に抑え、効率のいい資産形成を目指す投資手法の一つです。 毎月同じ金額を投資していくため、価格が高いときには自動的に購入数が少なくなり、価格が下落しているときには自動的に購入数が多くなり、平均購入コストを下げることができます。 私たちは普段の買い物でも、高くなったら買うことを控え、安くなったらたくさん買っておこうとします。それと同じで、投資でも安いときになるべくたくさん買い、高いときには買う数を減らすことで、平均購入コストを抑えられるのです。
「ドルコスト平均法」の優れている点は?
ドルコスト平均法は、自分で量を調整する必要はなく、結果としてそうなるところがポイントです。 たとえば、毎月ある投資信託に1万円投資すると決めたとします。その投資信託の基準価格が2000円の月には5口買うことになります。 翌月、基準価格が1000円になったら自動的に10口買うことになります。 購入コストは(2000×5+1000×10)/15で、1口あたり1333円です。 一方、一気に2万円分買った場合、基準価格2000円で10口を買ったことになり、購入コストは1口あたり2000円です。 2カ月に分けて毎月1万円ずつ購入することで、2カ月の平均購入コストは、最初に全額投入した場合に比べて677円下がりました。 また、最初に2000円で購入して翌月に1000円に下がった場合、全財産の2万円の価値が1万円に下がったことになりますが、2カ月に分けて購入した場合は、最初の月に投入した1万円は5000円の価値になるものの、新たに投入した1万円分はそのままなので、全財産は1万5000円と、最初に一気に購入したときより財産が多い状態になります。 このようにドルコスト平均法を使うことで、市場が大きく変動する局面においても資産を保全しやすくなります。