キューバに広大な米軍基地、同盟関係でもない国になぜ? テロの被告らを長期勾留、「汚点」と批判される現場は今【グアンタナモ報告・前編】
中米のカリブ海にある島国、キューバ東部の沿岸部に奇妙な一画がある。キューバ人は通常入れず、区画内にいる人々も陸路で外には出られない。キューバの同盟国でないにもかかわらず、米軍が駐留するグアンタナモ海軍基地だ。2001年9月11日の米中枢同時テロで訴追された被告らを超法規的措置として長期勾留し、米国の「汚点」と批判されてきた。テロの主犯格とされる被告らの公判前手続きが続く基地内での特別軍事法廷を傍聴するため、9月30日から1週間の滞在を許可された。(共同通信ニューヨーク支局=稲葉俊之) ▽米メディアでも関心低く 一般の航空便ではグアンタナモ基地にはたどり着けない。米軍が手配したチャーター機に搭乗するため、午前6時半にワシントン近郊のアンドルーズ基地に集合するよう指示を受けた。航空機代は往復で800ドル(約12万円)。少し高めだが他に選択肢はない。 米大統領や訪米する各国首脳も利用するアンドルーズ基地で、軍事法廷関連の広報担当を務める海軍のアダム・コール少佐が出迎えてくれた。5年前、沖縄県に駐留していて取材で1度お世話になった。長崎県の佐世保基地にもいたことがあるらしい。
コール氏と共に搭乗するメディア関係者は私とドイツ誌の記者だけ。他に米紙などの記者2人が2週間前から現地入りして軍事法廷を取材していた。同時テロから20年以上が経過し、遠隔地でもあり、米メディアの関心は必ずしも高くない。 ▽迂回の真意は… 他の搭乗者は弁護団ら軍事法廷の関係者や基地の施設で働く関係者。事前に渡航許可を得ている人しかいないためか、搭乗ゲートへの荷物と身体検査を担当する米兵は1人だけで、空港より簡易だ。ラミネート加工され、マジックで出発時間などが書かれた搭乗券を受け取った。 駐機場で乗ったバスは数機の米政府専用機の脇を通り過ぎ、全体は白く、尾翼とエンジンが赤く塗装された中型機ボーイング767の前で止まった。機体に書いてある「オムニ・エアー・インターナショナル」がチャーター機運航会社らしい。 搭乗者は数十人で座席指定はなく、ビジネスクラス席は早い者勝ちだったが、出遅れてエコノミー席に座った。飛行経路や映画が見られるモニターがあり、午前9時20分ごろに離陸すると軽食も出て、普通の航空便と変わらない。到着まで3時間29分と案内があった。