【タオルより軽くて吸水性が良くすぐ乾く】酷暑の夏に重宝したい、伝統技術で作られる「手ぬぐい」
「エリアマネジメント」というものを、ご存じでしょうか? まちづくりを行政任せにするのではなく、地域住民や事業主も積極的に関わっていく取り組みのことです。 【写真】濱甼髙虎「手ぬぐい」 私が運営するブックカフェ「Hama House」がある日本橋浜町には「一般社団法人日本橋浜町エリアマネジメント」があり、私たちも事業者として参加しています。その成果として、マルシェの定例開催や、隅田川に架かる新大橋のたもとに「関東大震災避難記念碑」が長年放置されていたのを皆で掃除し、防災の重要性を再認識する取り組みもしています。この取り組みを通じて、大の仲良しになったのが「濱甼髙虎」の髙橋由布さんです。 「もともと、呉服問屋に勤めていた祖父が戦後に独立したのが始まりです。呉服問屋として着物の反物を扱っていましたが、父の代になって、半纏、暖簾、手ぬぐい、袋物などを手がけるようになり、今では、トートバッグやTシャツもつくっています」 取材中、「手ぬぐいがほしい」という男性が来店してきました。私は思わず、「どうして買いに来たんですか?」と聞いてしまいました。男性は焼肉店で働いているそうで「タオルだと暑いから、手ぬぐいにしようと思って」とのことでした。そうなんです。手ぬぐいは、軽くて、吸水性が良くてすぐ乾き、コンパクトで持ち歩きも収納も非常に重宝する一品なのです。 「例えば、ちょっと前までは、妊娠5カ月を迎える戌の日には、サラシの腹帯を巻いて安産祈願をするという風習がありました。子どもが生まれるとおしめに使い、その後は雑巾にして、最後には裂いてハタキにしていました。今は、ほとんどの人が紙オムツですし、こうしたことは生活の中から少しずつ消えていってます」
年末年始のご挨拶として手ぬぐいが贈られることも多かったそうですが、今では少なくなってしまいました。
守っていきたい、昔ながらのつくり方
手ぬぐいの利用者が減るのに合わせて、つくり手も減っています。 「手ぬぐいづくりの工程は、(1)図案描き、(2)型紙彫り、(3)紗張り、(4)のり置き、(5)染め付け、(6)水洗、(7)整理と続き、この後、1本ずつ切っていきます。紗張りというのは、型を補強するためにメッシュ状の布に漆を塗って万力で圧着します。90歳近くになるまで続けていた関東唯一の紗張り屋の女性がいたのですが、コロナを機に閉業されるので技術を教えてもらうと同時に、道具も譲り受けました。やっぱり、昔ながらのつくり方を守っていきたいという思いが強いのです」 紗張りの道具を見せてもらうと、その年季が入った様子に驚かされました。大きな万力には丸太が重しとして使われていて、それによって圧着させるのです。こうした道具を見せられると由布さんの伝統技術を残したいという思いがよく分かります。 「手ぬぐいの絵柄は、干支のものについては毎年新しいものを出しています。今年は辰年なので『赤龍』をデザインしました。定番である小紋柄では『日本橋』です。そろばんを図案化して表現しています。どうしてそろばんかと言うと、商いの必需品、商いの中心は日本橋という見立てなのです。 一方で、私の父がそうだったのですが、小唄を習ったり、全国各地のお祭りに顔を出したり、遊びの中から新しいアイデアを生み出していました。そういう姿勢はこれからも大切にしていきたいですね」 「花火」など、季節の絵柄手ぬぐいもおすすめです。60本以上の注文であれば、オリジナルデザインの手ぬぐいもつくって頂くことができます。 高虎商店 東京都中央区日本橋浜町2-45-6 03-3666-5562
水代優