毎年130万人、交通事故「死者数」が世界大戦の犠牲を超える日! 日本は世界有数の自動車生産国、その責任は重い
世界大戦を超える危機
自動車が発明されて以来、これまでに、6000万~8000万人が自動車事故で死亡し、20億人が負傷したといわれている。 【画像】えっ…! これが60年前の「海老名サービスエリア」です(計15枚) 車両の安全性は高まっているものの、21世紀を迎えてもなお、 「毎日500人」 を超える子どもたちが関連事故で亡くなっている。3分にひとりの割合で、毎日子どもが亡くなっていることを想像できるだろうか。世界では34人にひとりが自動車関連死である。自動車の発達と普及によって多くの利便性を享受してきたが、運転するしないにかかわらず、自分や家族、知り合い、仲間がいつ犠牲になってもおかしくない状況に直面し続けている。 毎日の暮らしのなかで、テレビから流れてくる交通事故のニュースも、どこかその悲惨さがマヒしてしまっているのではないかと感じるときがないだろうか。 第2次世界大戦だけで、約7800万人以上の人が戦死したといわれている。今なお毎年130万人を超える人たちが交通事故で亡くなっており、自動車による交通事故関連死は、累計で 「世界大戦をいよいよ超える」 ともいわれている。 日本は世界でも有数の自動車生産国であり輸出国でもあり、その責任は重い。以前ジャカルタでインドネシア高官と交通問題を協議する会合に出席した際、高官からの第一声はいまだに忘れられない。 「日本人の皆さん、ジャカルタの道路を走っているクルマはどこのクルマがご存じですよね。ほとんどが日本産の自動車です。ジャカルタが抱える深刻な渋滞問題や環境汚染の責任は、あなたたちにもあることを認識していますか。渋滞問題を一緒に解決していきましょうではなく、あなたたちが積極的に解決策を提示すべきではないでしょうか」
SUVブームと事故リスク
日本の自動車が世界で売れれば売れるほど、海外からの 「日本人に対する目」 は一層厳しくなっており、その自覚が求められる時代だ。自動車がガソリンから電気自動車(EV)や水素に例え置き換わったとしても、交通事故の社会問題は改善しない。ガソリンからEVにシフトしていくと、車両重量が大幅に増加し、同じ速度でも人との接触では、衝突の影響も大きくなることが懸念される。 もちろん、日本の自動車メーカーはこれまで世界最先端の安全に対する対策に取り組んできており、近年の衝突安全装置に代表されるような目覚ましい成果も上がっている。しかし、自動車の技術だけでは、悲惨な交通事故を防ぐことには限界があり、根絶できないことが今や世界の常識だ。 交通事故の原因の9割以上はドライバーの 「ヒューマンエラー」 であり、自動車という車両ではなく、運転手、つまりは人間が原因であり、運転手に対する安全対策が重要だ。日本では、ときおり自転車や歩行者などの対策が議論になり、さらに歩行者や自転車の安全配慮行動に対する広告や啓発、キャンペーン、関連した行政政策を目にすることがある。いずれも防衛策としては大切ではあるものの、最優先すべき啓発対象、道路交通安全対策の対象は 「運転手」 であることはいうまでもない。 また、昨今のスポーツタイプ多目的車(SUV)ブームに対しても世界の目は日に日に厳しくなっている。米国内の年間の交通事故死亡者数は4万人を超え、歩行者が巻き込まれる死亡事故も急増している。 その要因のひとつに近年の 「車両の大型化」 が指摘されている。Edwards and Leonard(2022)らの報告では、子どもがSUVに衝突された場合、従来のクルマに衝突された場合よりも死亡する可能性が 「8倍高い」 ことを明らかにしており大きな話題だ。前回の記事「「メガSUVブーム」欧州で大問題に! 車両の大型化で死亡リスク30%増の報告、パリではSUV規制を問う住民投票も」(2024年2月19日配信)で紹介したパリのSUV規制は世界中の交通政策担当者内で大きな話題となり、パリに続き、オーストラリアのメルボルンでも同様の規制を年内に開始する議論が議会で始まった。