新型Q8 e-tronは人とかぶらないアウディが欲しい人にピッタリな1台か!? 新時代の高級SUVに迫る
一部改良にあわせ名前も変わったアウディの大型EV(電気自動車)、「Q8 e-tron」に、大谷達也が試乗した! 【写真を見る】新型Q8 e-tronの細部をチェック(18枚)アウディらしい高級感あふれるインテリアがイイ!
駆動力配分をハンドリング特性に活用
早いもので、私がアウディe-tronを初めて体験してから10年が過ぎた。いま振り返ってみると、それはとても長い旅路だったようにも思える。 e-tronの名前が世に出たのは2009年のフランクフルト・モーターショー。このとき登場したe-tronは、スーパースポーツカーの「R8」をEVにモディファイしたコンセプトカーだった。 本プロジェクトは、残念ながら3世代分の試作車を開発して終了したが、私は幸運にも3世代目のR8 e-tronにベルリンの特設コースで試乗。左右後輪を別々のモーターで駆動するトルクベクタリング(駆動力や制動力を左右輪で個別に制御することで、ステアリングを用いることなくクルマが曲がろうとする力を生み出す技術)の効果が絶大なことと、エンジンに比べてレスポンスが圧倒的に優れた電気モーターのメリットを体験して、強い衝撃を受けたことをいまでも克明に思い出せる。 その後e-tronの名前は「A3」のプラグイン・ハイブリッドモデルにも使われたりもするのだけれど、やがてEV専用のサブブランドとする方針が決定。現在に続くe-tronの道筋ができあがったが、e-tron初の量産モデルが発売される直前にも、私はそのプロトタイプに試乗する幸運に恵まれた。 アウディのスタッフが世界中で「雪にできるだけ近い摩擦係数の路面(つまり雪とおなじくらい滑りやすい路面)」を探しまくって、ようやく見つかったのは南アフリカに隣接するナミビアという国の砂漠地帯(のようなところ)。 ここの砂は小麦粉みたいにサラサラで、なるほど雪のようにタイヤがよく滑ったけれど、SUV形状のe-tronプロトタイプはクワトロの血筋を引く4WDだけあって、ここでも強力なトラクションを発揮してダイナミックな走りを披露したのである。 しかも、2基のモーターで前後輪を独立して駆動する方式をe-tronは採用。駆動力の前後バランスを調整し、ハンドリング特性をオーバーステア(ハンドルを切った以上によく曲がる特性)にもアンダーステア(ハンドルを切ったほどクルマが曲がってくれない特性)にも調整できる能力を手に入れたのである。 このとき試乗したe-tronプロトタイプは、ほぼそのままの形で2018年に発売されると、2022年にはドイツ本国で初のマイナーチェンジを実施。あわせて、近年e-tronの名を用いるモデルが増えてきたのもあって、Q8 e-tronと改名して心機一転を図ることとなった。 こうやってe-tronの歴史を見ると、駆動力配分をハンドリング特性に活用しようとする姿勢が見えてくる。それこそが、オンロード4WDモデルの先駆者であるアウディらしい思想でもあるのだろう。