第94回選抜高校野球 只見、雪溶かす春到来 聖光、夢舞台へまい進(その2止) /福島
<センバツ高校野球> ◇聖光、夢舞台へまい進 4年ぶり6回目、日本一目指す 大会本部から聖光学院に吉報が届いたのは、午後3時15分過ぎだった。学校関係者や報道陣ら約40人が見守る中、会議室に置かれた電話が鳴った。新井秀校長が受話器を取り、「このたびはお世話になります。喜んでお受けいたします」と応えると、一斉にフラッシュがたかれ、新井校長は胸をなで下ろしていた。 新井校長は、斎藤智也監督(58)らと共に早速グラウンドへ向かい、選手たちに出場決定を報告した。「きょうを迎えられたのは周りの人の支えのおかげだ。試合まで残された時間で力を伸ばし、新型コロナウイルスに感染しないよう気をつけながら、感謝の気持ちを忘れずにベストの状態で甲子園で躍動してほしい」と激励した。 ナインは引き締まった表情で話を聞いていた。主将の赤堀颯(2年)は「日本一という大きな目標に向け、応援してくれているすべての人へ恩返しできるよう、日々精進していく」と宣言した。 校長の報告が終わると、選手たちの顔は一気にほころんだ。 エースの佐山未来(同)は「センバツ出場はずっと目標にしてきたことなので、すごく楽しみ。どういうピッチングを見せようとかではなく、周りの人に何かを感じてもらえるような、感動を与えられるようなピッチングをしたい」と話していた。 佐山をリードし、打線の中軸を担う捕手の山浅龍之介(同)は「センバツに出場でき、素直にうれしい。(昨年の夏の甲子園に出場できなかった)3年生が卒業する前に良い報告ができてよかった。ただ、県代表、東北代表として戦うには力が足りていないと思う。これまでの課題だった打撃を中心にチーム全体を強化していきたい」と話した。 勝負強さが持ち味の三好元気(1年)は「一日中、緊張していたので出場が決まって良かった。昨秋は投手に頼っていたチームだったので、センバツでは打撃力をつけ、投手を楽にさせたい」と前を見据えた。 昨秋の県大会で、何度も適時打を放った嶋田怜真(2年)は「新チームになってから全員が主役になれるチーム作りを目指してきた。一人一人が自覚を持ち、目標達成のために努力できるのがこのチームの強み。センバツに向けて技術やパワーを磨き、日本一を目指したい」と勝利に貪欲だった。 斎藤監督は「子どもたちと選抜の舞台で野球をするという強い信念とイメージは持っていたので、無事、現実が訪れた。昨秋の県大会と東北大会は薄氷の試合の連続だった。出場校の中でおそらく一番打率が低く貧弱だったので、開幕までにいかに打線を強化するかが鍵になる」と気を引き締めていた。 ◇エース軸、粘り強い野球 聖光学院は直球に切れのあるエース右腕、佐山未来(2年)を軸に守備から流れを作り、粘り強さがあるのが特徴だ。昨夏の甲子園に出場できなかった3年生たちが練習を支えてくれた効果もあり、昨秋の東北大会では集中攻撃で相手をたたみかける力も付いた。 2回戦は東奥義塾(青森)に逆転された七回に嶋田怜真(りょうま)(2年)のスクイズと高中一樹(1年)の適時打で再逆転し、諦めない姿勢が光った。準々決勝は、秋田の強豪、能代松陽に15安打13得点の五回コールド勝ちと圧倒。準決勝も、青森山田戦で六回2死満塁から主将の赤堀颯(はやと)(2年)が走者一掃の三塁打を放つなど計10安打5得点と快勝した。 チームの厚みも増している。左腕の小林剛介(2年)は東北大会決勝で花巻東(岩手)に九回を粘投し7三振を奪った。打撃では、三好元気(1年)に勢いがあり、昨秋の県大会2回戦では代打本塁打、決勝では試合を決める適時打を放つ勝負強さを見せた。 ……………………………………………………………………………………………………… ◆聖光学院 ◇夏13大会連続、戦後最長 1962年、故野田新弼(しんすけ)氏が創立したキリスト教系の私立校。野球部は63年創部。2019年まで夏の甲子園に戦後最長の13大会連続で出場した。 校訓は「神と共に働く人に」。奉仕の精神を持ち、創意工夫に富んだ人材育成に取り組んでいる。学科は普通科と工業系学科があり、22年度に再編される。普通科には進学探究▽スポーツ探究▽福祉探究――の3コースを設置。工業系学科は工学科と名称を変え、生徒は2年次から、機械工学▽プロダクト工学▽情報工学――の3コースを選択して学ぶ。 文武両道を目標に掲げ、運動、文化系を合わせて32の部活動がある。サッカー部や柔道部、剣道部なども県内の強豪として知られている。