天皇杯準Vも仙台で光ったFWジャーメイン良の潜在能力
ありったけの悔しさを込めて、埼玉スタジアムのピッチからメインスタンドの中段にあるロイヤルボックスを見つめた。勝ち取ったばかりの天皇杯を夜空へ掲げながら、王者の雄叫びをあげる浦和レッズの選手たちの姿を、ベガルタ仙台の大卒ルーキー、FWジャーメイン良(23)は必死に脳裏へ焼きつけていた。 「ああいう光景というのは、やっぱり忘れちゃいけないので。次は自分たちがあの舞台に立てるように、頑張らないといけないと思っていました」 9日に行われた天皇杯全日本サッカー選手権大会決勝。森保ジャパンが臨む4年に一度のアジアカップが来年1月上旬からUAE(アラブ首長国連邦)で開催される関係で、本来の元日から大きく前倒しされた大一番で、クラブだけでなく東北勢としても初優勝を狙ったベガルタが一敗地にまみれた。 レッズの倍以上となる16本のシュートを放ちながら、ゴールの枠へ飛ばすことができない。開始13分にペナルティーエリアの外から豪快に叩き込まれた、MF宇賀神友弥のスーパーボレー弾が重くのしかかったまま、ジャーメインはシュート0本のまま後半22分にベンチへ下がっていた。 「相手が嫌がることをやろうと考えていて、最初は裏を狙っていたんですけど。最終ラインの選手たちに背後のスペースをかなりケアされていた。前を向かせてもらえなかったというか、自分のよさを出す前の段階で消されてしまった場面が多かった。背後へのケアが厳しいことにもっと早く気づいて、自分の足元へボールを引き出すとか、もっと違う方法で挑めばよかったのに。自分の動きが一辺倒になってしまった」 50mを6秒フラットで駆け抜ける韋駄天ぶりと、スピードに乗った状態で仕掛けていく姿勢がジャーメインの最大の武器だ。しかし、4回戦、準々決勝、そして準決勝と3試合連続ゴールを決め、ベガルタを波に乗せてきた若きキーマンは、レッズの守備陣によって徹底的に研究されていた。 「ここで仕事をさせたら、僕がいる意味がありませんから。1年目ですよね、彼は。今日のような経験が彼を強くするはずだし、これからもっと伸びていくと思いますけど、彼が活躍するのは、さらにステップアップするのは今日じゃなかった、ということだと思います」 森保ジャパンに名を連ねるDF槙野智章は、ジャーメインに自由を与えなかった組織的な守備に対して自信満々に胸を張った。スペースがなければ、スピードは生かせない。手詰まりになった23歳のストライカーは次第に試合の流れから消え、渡邉晋監督も交代を決断せざるを得なかった。