「生きやすい社会は周りが作る」 京アニ遺族、講演で訴え 水戸
36人が犠牲になった2019年の京都アニメーション放火殺人事件で、命を落とした渡辺美希子さん(当時35歳)の母達子さん(74)と兄勇(いさむ)さん(45)=いずれも滋賀県=が6日、水戸市で講演した。犯罪被害者に対するカウンセリングの重要性や、理不尽な事件や事故を少しでも無くす社会の構築を訴えた。 【写真】京アニ放火事件から5年 跡地で追悼式 美希子さんは08年に入社。人気アニメ「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」の美術監督を務めるなど、主に背景美術の担当者として活躍していた。 勇さんは事件当初、妹を失った心の傷を認めたら生活に支障が出ると思い、滋賀県警から勧められたカウンセリングを受けなかった。すると、原因不明の微熱が続き、精神科で話を聞いてもらったところ、体調が回復したという。 勇さんは当時の状況を「しんどいことを吐露することで、頭の整理ができた」と振り返り、「カウンセリングを断る人がいても、タイミングをみて再度勧めてみることで、助かる人も出てくるのでは」と話した。 達子さんも最愛の娘を突然失い、パニック状態のまま生活していたという。過度のストレスの中で、カウンセリングを受け、少しずつ気持ちの整理が進んだという。 事件を防ぐことはできなかったのか――。達子さんは「生きやすい社会は周りが作るもの。良い組織ができても、温かい空気がないと機能不全になる」と訴えかけた。 講演会は約130人が参加。いばらき被害者支援センターが年に1度開催している。【西夏生】