反日SNS放置の中国、パンダで関係改善? ツーリズムEXPO2024(終)
日本観光振興協会(日観振)と日本旅行業協会(JATA)、日本政府観光局(JNTO)が主催する世界最大級の旅行イベント「ツーリズムEXPOジャパン」の一般公開が9月28日と29日に行われた。2年ぶりに東京ビッグサイトでの開催となった。 テーマは「旅」の完全復活元年。海外から約80の国と地域、全国47都道府県から企業や団体約1384の出展者が一堂に会した。主催者の発表によると、業界・報道関係者向けの公開日26日と27日を合わせた4日間の会期中、18万2900人が来場したという。 出展者の中で、動向が注目された国は中国。日本人学校の児童が殺傷され、反日的なSNSの投稿が野放しになっている状況、中国軍機の領空侵犯、一部の訪日中国人観光客による奈良公園のシカに対する暴行、レンタカーによる重大な交通事故など、これまで以上に日本人の対中感情が悪化する中、中国は観光をどう捉えているのだろうか。 初日の26日に会場を訪れると、中国駐東京観光代表処のブースには、上海市などの自治体をはじめ、中国国際航空(エアチャイナ、CCA/CA)などの航空会社、旅行会社などが数多く出展。イベントのステージも設けられ、日中関係の悪化前と変わらない力の入れようだった。 代表処の担当者によると、ブースを訪れるのは訪日中国人を受け入れる中国人経営の旅行会社だけでなく、日本の旅行会社からも訪中ツアー商品の組成に向けた訪問がみられたという。中国へ昨年2023年に返還された上野動物園生まれのジャイアントパンダ「シャンシャン(香香)」の誕生日を祝う日本からのツアーは、7分で完売したといい、コロナで大きく落ち込んだ訪中需要の回復につなげたかったようだ。 一方で、中国外務省の林剣(りん・けん)報道官は、9月18日に深セン日本人学校の児童が殺害された際、「いかなる国でも起こる可能性がある」と説明。中国で再び同様の事件が起きる可能性を懸念する声が日本国内で聞かれる。そして、四川省内の幹部が、SNSアプリ「微信(WeeChat)」で日本人の殺害を推奨するかのような発言をしており、日本人が率先して中国へ渡航することには、安全上問題があると言わざるを得ないだろう。 12年前の2012年9月11日に、尖閣諸島を日本政府が国有化した際は、直後の9月21日から開かれたツーリズムEXPOの前身「JATA旅博」で、中国国家観光局のブースには「中国国家観光局は、その都合により展示を行っていませんのでご了承ください」(原文ママ)との看板だけが立ち、異彩を放っていた。 日中関係の悪化と連動し、出展を急遽見送った2012年と比べると、今回は通常レベルの展示だったといえ、中国側は日中関係のさらなる悪化を望んでいないようにもみえる。一方で、日本国内での中国人による度重なる犯罪や交通事故、中国軍による挑発行為は相変わらずであり、神の使いと言われる天然記念物のシカに暴力を振るい続ける国に、友好的な感情を持てというのは無理があると言えそうだ。
Tadayuki YOSHIKAWA