山本由伸 日本人ピッチャーで唯一の「ヤリ投げ投法」の凄み《専門家が投球フォームを徹底分析!》
投手としてメジャーリーグ史上最長の契約となった男への期待が、日に日に高まっている。 【画像】山本由伸 「ヤリ投げ投法」の凄み!連続写真で徹底分析(写真5枚) 12年総額3億2500万ドル(約462億円)で合意し、ドジャースへ入団した山本由伸(25)だ。同じくドジャース入りした大谷翔平と今季からチームメイトとなる山本。動作解析の専門家で筑波大学・体育専門学群准教授の川村卓(たかし)氏は、彼の活躍に太鼓判を押す。 「山本はヤリ投げのような投法です。ピンと地面へ突っ張った脚を起点に、腕をムチのようにしならせて投げています。実際に、他の日本人投手がやらないヤリ投げをトレーニングに取り入れているとか。しっかり脚を地面に踏み込ませているため、メジャーの硬いマウンドに合った米国向きの理想的なスタイルです」 以下、山本のフォームを連続写真で見ながら川村氏の解説を聞きたい。 「独特な始動です。普通、右投手は左脚を高く上げてバランスを取ります。しかし山本はほとんど上げず、立った状態からいきなり投げ始めている。右脚を置く位置や体重の乗せ方がとても良いのでしょう。左脚を上げなくても、しっかり地面を踏めている証拠です」 「2段階目」では地面を踏んだ右脚から、打者側に身体が平行移動している。 「打者方向への平行移動はムダが少なく効率的で、178㎝と野球選手にしては小柄な山本が力強いボールを投げられる要因になっています。この時点で右手は肩の位置まで上がっているため、高い所から落差の大きいボールを投げられます」 「3段階目」のポイントは腹だという。 「お腹や胸が張り『腹圧(腹腔内部の圧力)』がかかっていることがわかります。下半身と上半身が繋(つな)ぐお腹の圧力が抜けなければ、下から上へ力がスムーズに伝わるんです。普通はなかなか難しい。山本は股関節にしっかり体重を乗せているので、腹圧が抜けていません」 「4段階目」から「5段階目」では、ピンと突っ張った左脚を軸に上半身が回転しているのがわかる。「ヤリ投げ投法」と言われる所以(ゆえん)だ。 「多くの日本人投手は、脚を曲げて投げます。軟(やわ)らかい日本のマウンドなら、そのスタイルも良いでしょう。しかし硬いメジャーのマウンドでは下半身への負担が大きくなり、股関節を痛めてしまう。米国でケガに泣かされた松坂大輔や上原浩治はその例です。 山本はヤリ投げ選手のように脚を伸ばし地面を強く踏むことで、日米の違いを克服しています。ポイントはお尻や太もも。ハムストリング(太ももの裏の筋肉)をうまく使い踏み込んだ脚を固定させることで、上半身をグーンと勢い良く回転させ腕の大きなしなりを生んでいます」 日本で投手部門の主要タイトルを総なめにし、3年連続で沢村賞を受賞した山本は、メジャーでどれだけの成績を残せるのだろうか。 「山本のフォームはメジャー向きです。15勝はできる可能性があります」 日本人唯一のヤリ投げ投法で、山本がメジャーの強打者たちに挑む。 『FRIDAY』2024年1月19日号より
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