あなたは「極上の特上の乗り心地」を知っていますか? モータージャーナリストの今尾直樹がメルセデスAMG S63 Eパフォーマンスなど5台の輸入車に試乗! 知られざるガイシャの凄い世界
外車は刺激だ!!
モータージャーナリストの今尾直樹さんがエンジン大試乗会で試乗した5台のガイ車がこれ! BYDドルフィン、ケータハム・セブン340R、フィアット・ドブロ、メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス、ポルシェ・カイエンSクーペに乗った本音とは? 【写真24枚】モータージャーナリストの今尾直樹さんが乗ってガイシャの愉しみを感じた5台の詳細画像はこちら! ◆異なる価値観でもって自分を刺激してくれるクルマがガイシャだ! 朝、試乗第1号車のフィアット・ドブロでご一緒したEPC会員の方は、若いのにアルファのジュリエッタ(2021年に販売終了)とフィアット500CのMT、それにマツダCX-60の直6ディーゼルをお持ちのクルマ好きだった。まずはジュリエッタの走行距離をおさえるために500Cを、さらに直6ディーゼルの後輪駆動、ということでCX-60を買った。ローン返済のため、夕食はモヤシ一択のびんぼう自慢。ダイエットにもなって一石二鳥。EPCのトヨタ博物館見学会にはCX-60で参加するけれど、燃料代のことを考えると吐き気がするという。エライ!! かつてガイシャとは進んだ西洋の自動車のことだった。いまは違う。私的には、自分と異なる価値観でもって自分を刺激してくれるクルマがガイシャで、そういうひとをガイジンと呼びたい。外の世界との交流で私も元気をいっぱいもらった。いくぞ~。1、2、3、ダーッ!! と。 ◆BYDドルフィン「中華の勢い、龍の如し」 愛らしいカタチに、内装もA5サイズのタッチスクリーンと円柱型のギアのスイッチが未来っぽくて、走る前からデザインの先進性を感じさせた。この大型スクリーン、ステアリングのスイッチで横から縦に電動で動く。イルカの胸ビレを模したというドア・ハンドルのかたちもステキで、元トヨタ・ディーラーのメカニックだった会員の方を相方に、驚きの連続をつぶやきながら試乗した。まずもって発進した途端、室内に「うぉおおおん」というような人工音が鳴り出し、30km /hに近づくにつれて大きくなった。速度をさらにあげると静かになる。運転手に注意を喚起しているらしい。西湘バイパスを走行中、電話の呼び出し音みたいな音がどこかで鳴っている……と思ったら、速度違反を教えてくれているのだった。ウィンカーを出さずに車線変更したら、レーン・キープ・アシストが、ギュウンッと、襟ぐりをつかむような勢いでもとの車線に戻す。かの国ではこれぐらい強力な指導が当たり前なのかもしれない……。乗り心地は良好。一充電で476kmも走れて、407万円。中華の勢い、龍の如し。 ◆ケータハム・セブン340R「英国のスポーツカーをニッポンが元気にしている」 もうすぐ帰国してケータハム本社で仕事をするというジャスティン・ガーディナーさんから試乗前にレクチャーを受ける。長らく同社の日本の代理店でマーケティングその他を担当し、軽規格のセブンを発案したひとだ。セブン340Rは2022年発表の中堅モデルで、最高出力172psの2リッターフォード・デュラテック・エンジンを搭載する。デュラテックは生産終了前に1800基を購入、マツダ・ロードスターのNA&NB用5段MTと組み合わせる。車重540kgで1トンあたり340ps、というのが車名の由来だ。2021年に日本の企業の傘下に入ったケータハム社は工場の移転によって年産能力を500台から750台に引き上げ、現在2年の納期を短縮するという。数年前から「ワン・マン、ワン・カー」制を導入したことで生産品質も向上。新しい340Rもよさげに見える。運転してみれば、まさしくセブン! 場内のみの試乗ゆえ、3速に一瞬入っただけだけれど、加速の軽やかさと野太いサウンドに、呵呵痛快! エンスーの聖地、英国のスポーツカーをニッポンが元気にしている。これまた呵呵也!! ◆フィアット・ドブロ「中身は同じでも、流れているのはイタリアの血」 リアのスライド・ドアを開けて後席にバッグを置き、いざそのドアを閉めようと思ったら寸毫も動かず。押してもダメなら引いてみな……と、いろいろやってみる。閉まらん。同乗する会員の方が試してみると、あっさり閉まる。ありがたや。私には閉められないけれど、会員さんには閉められた。ガイシャにはクセがある。それが日常にささやかな喜怒哀楽をもたらす。兄弟車のシトロエン・ベルランゴとどこが違うのか? と思いながら発進。会員さんとおしゃべりしながら西湘バイパスを走る。ベルランゴと機構的には同じはずだけれど、足まわりはどことなくイタリア車っぽい。バネは記憶のなかのベルランゴ同様ソフトだけれど、ベルランゴよりストロークが抑えられていて、ダンピングが効いている。よりフラット感がある。130ps、300Nmの1.5リッター直4ディーゼル、8ATのギア比も含めてフランス勢と同じなのに、より活発に回るような気がする。走行距離が9000kmに達しているから? いやいや。中身は同じでも、流れているのはイタリアの血。それがガイシャってもんだぜ。 ◆メルセデスAMG S63 Eパフォーマンス「極上の特上、の乗り味!」 直前にケータハム・セブン340Rに乗っていた。車重560kgの超軽量小型スポーツカーから、セブンが収まるほど長い3215mmのホイールベースの、車重が車検証で2690kgもある、重量級超高級サルーンに。こういう場合、鈍重感はハンパない……と思うでしょ。ところが、違和感がまるでない。最高出力612ps、最大トルク900Nmの4リッターV8ツイン・ターボに、PHEVのモーターを組み合わせて、システム最高出力802ps、アッと驚く1430Nmのシステム最大トルクが、重くて巨大なSクラスをセブンのように軽やかに走らせる。そのスムーズさと静かさはモーターのアシストと4WDのおかげもあるだろう。回せば、V8が雄叫びをあげ、オールド・ボーイを得心させる。エア・サスによる乗り心地はふかふか。だけど、ふわふわではない。極上の特上。ドライビング・フィールは濃厚なのに、あっさりしていて胃にもたれない。セブン340Rに通じる、淡白さをあわせ持つ。さわやかなんである。これぞF1テクノロジー!? 最新鋭のAMGスリー・ポインテッド・スターはとんでもなくスゴい。 ◆ポルシェ・カイエンSクーペ「SUVなのにポルシェ!」 SUVなのにポルシェ! そのことにあらためて感心した。ポルシェなんだから当たり前。と思うのは間違いである。かの長嶋茂雄だって、長嶋茂雄であり続けるのはたいへんだ、という意味のことを語っている。昨年上陸したカイエンSの後期型はものすごい剛性感。というのが第一印象で、ステアリングもペダルも重めで、男っぽい。22インチの前285/40、後ろ315/35のピレリPゼロがこの剛性感に寄与しているにちがいない。エンジンが2894cc V6から3996cc V8のツイン・ターボになり、最高出力が440psから474psにアップ。その一方、2チャンバーのエア・サスペンションを得て、バネ自体は意外とフワフワに感じる。山道に至り、ドライブ・モードをスポーツ、さらにスポーツ・プラスに切り替えると、脚が俄然引き締まり、V8がうなりをあげる。減速時には自動でブリッピングしながらダウンシフト。シートバックの背骨の当たる部分が硬くて痛い。自分の猫背のせいだ、と気づく。背筋をスッと伸ばし、丹田に気を込めることを意識してみる。リッパなポルシェ乗りになった気がしてニヤリ。 文=今尾直樹 (ENGINE2024年4月号)
ENGINE編集部
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