審判として夢の甲子園に 大きな声で魂込めジャッジ 川口の消防士・遠山茂樹さん /埼玉
<第91回センバツ> 第91回選抜高校野球大会に、県高野連審判部に所属する川口市消防局の消防士、遠山茂樹さん(45)が審判員として派遣される。元高校球児で、仕事の傍ら約20年間、県内の高校野球で審判を務めてきた。球児として果たせなかった甲子園の土を踏む夢をかなえることになり、「アルプスの声援に負けない大きな声でジャッジしたい」と意気込む。【畠山嵩】 【熱闘センバツ全31試合の写真特集】 「ターイム!」。加須市の花咲徳栄高で16日にあった練習試合。二塁塁審の遠山さんが声を張り上げながら両腕を突き上げた。この日は午前8時まで当直勤務をこなし、その足で同校へ。「疲れはないです」と、最後まできびきびとした動きで務めきった。 旧大宮市出身。小学校から野球を始め、武蔵越生高(越生町)に進学。野球部で左腕の投手を務めた。高3の4月、練習試合で登板中に左腕から「バキッ」と音が聞こえた。野球肘だった。復帰したのは夏の県大会開幕の約1カ月前。ベンチ入りできたが登板機会はなかった。「7月になると今でも夢に出るんです。ベンチにいて投げられない。マウンドで投げるためにやってきたのにって」と苦笑いする。 高校を卒業し、消防士になって数年後、職場で審判をしていた上司と出会った。「当時の自分を支えてくれた人に恩返ししたい」と審判を始めた。年2回行われる県高野連の講習を受け、知識や技術を磨く。担当は東部地区。仕事は土日曜日が休みとは限らないが、年間約80試合で球審や塁審などを務める。 プレーする選手たちに納得してもらうため、大きな身ぶりと声でジャッジすることを心がける。「魂を込める気持ちでやっている」と力を込める。初めての甲子園で緊張はあるが、「火事現場も高校野球も長丁場。忍耐力は共通する」。仕事で培った集中力を発揮するつもりだ。 センバツに出場する春日部共栄は同じ東部地区の学校だ。「共栄には普段通りのプレーを心がけてほしい。自分も甲子園の雰囲気にのまれないようにしたい。一戦一戦、共栄の選手たちとともに頑張りたい」