地域の「日本のこれから」考える 富崎地区通して描く映画制作進行中 館山(千葉県)
館山市の布良、相浜地区を中心に、同市や南房総市の沿岸部を舞台にしたドキュメンタリー映画の撮影が進められている。 タイトルは「世界一の夕陽(ゆうひ)と生きる~移住の郷(さと)から~」。過疎など日本の地域社会が共通して直面する荒波の中にありながらも、この地域で日々を生きる人々と美しい風景にスポットを当て、見る人にこの国の「これから」を前向きに考えてもらいたい――。こんな思いを胸に、制作者は撮影、取材に当たる。公開は2025年夏の予定だ。 監督は、金髙謙二さん(68)。妻のひろみさん(55)がプロデューサーを務める。 金髙さんは、東京都江戸川区出身で国立館山海員学校(現館山海上技術学校)の1972年度の卒業生。タンカーの船員などを経てフリーの映画制作者になり、映画監督で脚本家の新藤兼人氏(1912~2012)の下で腕を磨いた。 監督として独立後は数多くのドキュメンタリー映画やテレビドラマなどを手掛け、長崎の原爆で家族を失った男性の姿を追った「ある同姓同名者からの手紙」で1992年度の毎日映画コンクール記録文化映画賞を受賞した。 今回の映画づくりに当たって金髙さんは、少子、高齢、過疎で社会が縮む地域や地方の現状や苦悩を受け止め、どうすればいいのかを、見る人に考えてもらうきっかけをつくりたいと考えた。 日本地図を逆さにみると、列島の頂に当たる位置に見える房総半島。近年は移住する人も増えている。そこで暮らす人々に目を向けることで、地域がもつ豊かな価値や日本の未来が見えるのではないか――。それを描く舞台として、学生時代を過ごした館山市などを選んだ。 すでに、満開の桜に染まる安房神社の境内の様子や、夕日が海の向こうに沈む光景、「青木繁『海の幸』記念館小谷家住宅」などで、風景の移ろいや人々の営みを、ドローンなども駆使して撮影。今後も2024年末までの予定で、安房神社の周りの広大な手つかずの森を未来に伝えようとする取り組み、19年の台風で被害を受けた民宿兼食堂の再建に立ち向かう家族、ついのすみかを求めて移住し漁業や商売に取り組む人らの撮影やインタビューに当たる。 25年初めから春にかけて編集作業をして1時間半ほどの作品に仕上げる。その後は館山市などで完成試写会を開催し、同年夏に全国の単館系映画館に声を掛けて公開する予定だ。 24年5月にホームページ(www.sekaiichinoyuuhi.com)を開設し、撮影作業に並行して映画をつくることへの思い、登場人物などを動画を交えて公開している。 金髙さんは「どうすれば自分の住んでいるところを住みよくできるか。答えは見る人に考えて、見つけてほしい。この映画がより良い社会をつくり出すヒントになれば」と話している。