「よかれと思って…」 親の劣等感を子どもで払拭する“受験後遺症” 「自分の価値観を伝えようとする勇気のある親が減った」
■「自分の価値観を子どもに伝えようとする勇気のある親が減った」
鳥羽氏は学生時代、中学受験を目指す男子の家庭教師をした時に、その子のストレスを目の当たりにしたという。「自宅の2階から物を投げて、走っている車に当てようとする状態だった」。しかし、母親にとってそれよりも重要なのは書き順を間違えること。「お母さんと話すと、実は受験にあまり詳しくなく、とにかく分刻みで子どもを管理していた。家庭を『休息の場』ではなく『管理する場』としてしまうと、うまくいかない」と語る。 「受験後遺症」の悪影響として、勉強や学校が嫌いになって、不登校になり、教材などを破棄してしまうケースがある。また、強度の親依存になり、何事にも目標や自主性を持てなくなる、親の期待に応えるためにカンニングなど不正行為をすることもある。 一方、パブリックテクノロジーズ取締役CTOのTehu氏は、受験期に厳しい親の目があったことを振り返りながら、「不安や学歴社会が『思い込み』ならよいが、社会は結構そうなっている。大人はなんとなく気づいているからこそ、子どもへの親心からアドバイスする。そうなると、子どもは反抗しづらい」との見方を示す。 これに鳥羽氏は「親は“自分の不安”で世界を作り、そこに子どもを招き入れてしまう」と指摘。「子どもごとに向き・不向きがあり、『この子は進学コースに行けるが、好きなことやっていい』と判断できている親を見ると、自然だと感じる。小学・中学受験の段階では、親がある程度判断するほかないが、そこで無理やりさせると後遺症になりがちだ」と説明した。 ブレイクダンサーのShigekixは、「コミュニケーションが全て」と考える。「親からの押しつけになると、愛情があってもプレッシャーになる。自分の母は、『一流大学に行くのが目的ではなく、目標を決めて達成するその努力を評価するものだ』と。成功体験の積み重ねでレベルアップするという“考え方”を教えてくれた。小学生の時に月1回の海外遠征があったが、『自由にしてる分、みんなと同じことをやらないといけないよ』とも言われていた。それは押し付けられている感覚ではなかった」。 これを受け、鳥羽氏は昨今の「価値観を押しつけるのは良くない」という風潮に問題提起する。「考え方を教えることを避ける親が多い、つまり自分の価値観を子どもに伝えようとする勇気のある親が減った。それは子ども自らが考える力を身につける土台になる」とした。
■「親もどんどん変わっていかなくてはいけない」
好きなものを見つけられずに、なおかつ勉強も得意とは言えない子どもたちも多い。鳥羽氏は「そういうグレーゾーンの人が、“受験後遺症”を抱えてしまう現実がある。10歳ぐらいまでは親がナビゲートする必要があるが、それを超えたら基本的に子どもの主体性に任せるべきだ」とアドバイスする。 また、「俯瞰すること」も大事だとし、「『私がこういう間違いをしているから、子どもがこういうことをやってしまっている』と気づくことができたら、絶対に変わってくる。親もどんどん変わっていかなくてはいけない」と投げかけた。(『ABEMA Prime』より)
ABEMA TIMES編集部