命削って働くか、それとも…元商社マンが選んだ新たな道 富士山麓の小山町を「農」で活性化
2023年に町内の米農家湯山直文さんと出会い、湯山さんの田んぼの玄米を使った「玄米deむすび」を道の駅で売り始めた。町のふるさと納税の返礼品にも採用された。何より「玄米がこんなに美味しいなんて」と、湯山さん自身が驚いたという。 「代々の米農家に根強い、白米にこそ価値があるという概念を覆したようだ。玄米の美味しさを湯山さん自身に知ってもらえてよかった」 ■農業が秘めるビジネスの可能性 「玄米deむすび」の加工販売業を拡大しながら2024年4月、単身で町に移住した。同月から足柄ふれあい公園の指定管理事業者として公園長を務めている。 公園には貸し農園のほか、バーベキュー場と芝生広場がある。「自分のように、都心から畑に通って野菜を作りたい人はたくさんいるはずだが、公園が知られていない。1人でも多くの人に利用してほしい」 農園では、農薬と化学肥料を使わない有機農法を実践する。町内の高校生が湯山さんら農家と一緒に、土づくりから収穫までを体験する場にもなっている。 農園で収穫した野菜は、毎月のマルシェで販売したり、バーベキュー場で提供したり。いずれは高校生に、野菜を使った新商品やメニューの開発にも挑戦してもらおうと考えている。 「農業は自分の体を作る食べ物と向き合う仕事。そしてビジネスを生み出す、無限の可能性を秘めた仕事だと伝えたい」 自らも借りている畑で有機農業に励む。オクラやモロヘイヤ、サニーレタスなど、息子が好きな野菜の種をまき、収穫のたびに都内の妻子に送る。小学生になった息子は「お父さんの野菜しか食べたくない」と言う。 このほど、亀山さんが起業した会社が農地所有適格法人に認められ、農地での生産ができるようになった。加工販売業と公園の指定管理業に加え、農業でも生計を立てていくつもりだ。 「農業を軸に町の交流人口を増やし、ビジネスの芽を増やしたい」 こだわるのはあくまで、野菜本来の美味しさを引き出し、人にも環境にも優しい有機農業。公園を拠点に、農林水産省が進める「オーガニックビレッジ」創出の取り組みをけん引しようと意欲を燃やす。
静岡放送