心に傷を持つ女性の意外な決断から始まるミステリー「かくしごと」
杏と奥田瑛二が親子役で共演
心に傷を抱えたまま生きてきた千紗子を演じているのは、「キングダム 運命の炎」や「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」(共に23)といった大作への出演が続いている杏。自身も子どもを持つ母親として「普段ニュースを見る中で、いろんな環境にいる子どもたちに対する想いが年齢を重ねて変わってきたので、その想いを反映できると感じました」と、今作への出演を決めた理由を語っている。その言葉通り、突然、目の前に現れた少年との出会いをきっかけに「常識破り」とも思えるような行動に走る千紗子の感情の動きを繊細に見せている。 千紗子と久しぶりに会ったものの、娘だと認識できなくなってしまった孝蔵役は俳優としての豊富な経験はもちろん、監督としても「長い散歩」(06)などの作品のある奥田瑛二。事前に認知症の方々が生活するグループホームを訪ねて研究を重ね、撮影に臨んだという。さらに、千紗子と本当の親子のように暮らしながら、子どもらしさを取り戻していく拓未役をドラマ『舞いあがれ!』(23)の中須翔真、千紗子の友人・久枝を『毒娘』(24)の佐津川愛美、孝蔵の友人で、千紗子の相談相手ともなる医師・亀田を『沈黙の艦隊』(23)の酒向芳が演じている。
“隠し事”を抱えた暮らしの結末は?
認知症の診断が往々にして悲劇的にとらえられるように、私たちの多くは記憶を失うことを恐れながら、日々、年を重ねている。しかし、「かくしごと」に登場する3人の姿を見ていると、記憶の喪失は過去をリセットし、新しい関係を始めるきっかけになりうるのかもしれないと思えてくる。だからこそ千紗子は胸に“隠し事”を秘めたまま、拓未と親子になろうと決めたのだろう。そんな彼女の気持ちがスクリーンの向こうから伝わってくる。 文=佐藤結 制作=キネマ旬報社
「かくしごと」 6月7日(金)より TOHOシネマズ 日比谷、テアトル新宿他全国順次公開 2024年/日本/128分 脚本・監督:関根光才 原作:北國浩二「噓」(PHP文芸文庫刊) 出演:杏、中須翔真、佐津川愛美、酒向 芳、木竜麻生、和田聰宏、丸山智己、河井青葉、安藤政信 / 奥田瑛二 配給:ハピネットファントム・スタジオ
キネマ旬報社