テクノ界を牽引し続けるジェフ・ミルズの新作で日本のカルトスター、戸川純とのコラボが実現したワケ…「ともに60年代に生まれたことがすごく意味を持っている」
テクノシーンを牽引し続けるジェフ・ミルズが、「ブラックホール」をテーマに新作『THE TRIP - ENTER THE BLACK HOLE』を発表。そこには、なんと80年代よりカルト的人気を博す戸川純、さらに彼女が属するバンド、ヤプーズのメンバーのクレジットが。戸川のレスポンスに大きな感銘を受けたというジェフに、刺激的な作品をつくり続ける秘密を聞いた。 【画像】テクノ界の重鎮が、音楽づくりで最も大事にしていることとは…
カルトスターとのコラボレーションが実現
──あらためて戸川純さんとのコラボはいかがでしたか? ジェフ・ミルズ(以下同) 彼女は海外でもとても有名なアーティストであり、光栄でした。今作のテーマである「宇宙」の把握もとても的確だったし、すごく触発されるものがありましたよ。 最も感銘を受けたのは、彼女の持っている「スタイル」です。リスナーにこびることをしない。客に妥協しないで、自分のアーティストとしてのやり方を信じていることが本当に素晴らしいなと思います。 ──制作ではどういう点が印象に残りましたか? 今回のコラボについて、大きかったのは年代ですね。ともに60年代に生まれたことがすごく意味を持っているように思えます。共通言語があるというか……。我々は自分の主張を持っている年代なんですよね。 ただ、僕は彼女の2歳年下で、1963年生まれなのですが、変化の大きい時代だから、その「2年間の差」も大きなものに感じました。 ──60歳になられても2年の差を感じたと(笑)。 宇宙科学、ブラックホールといった謎に満ちたテーマに対して果敢に取り組んで、迅速に素晴らしい詩をつくってくれたことには驚きました。その才覚がたくさんのリスナーやクリエイターを惹きつけてきたんでしょう。 ──ジェフさんのようなテクノのアーティストは、シンガーとのコラボは少ないと思います。これまで、女性シンガーと組まれたことはありますか? ゴスペルやジャズの女性シンガーとはコラボレートしてきました。最も感慨深かったのは、ジェシカ・ケア・ムーアという女性詩人と組んだ、The Beneficiaries(ザ・ベネフィシャリーズ)というユニットのアルバム『The Crystal City Is Alive』(2020年)ですね。ポエトリーリーディングとのセッションはスリリングでした。