ハリルJのスタメン抜擢に生き残りを賭ける柴崎、昌子の鹿島コンビ
大分市内で行われたミニキャンプ3日目の25日。海外組と国内組とに分かれて、ハリルホジッチ監督によるグループ面談が実施された。海外組に対して「厳しい環境でレギュラーをキープできるように頑張れ」と檄が飛ばされたのに対し、国内組に対してはフィジカルコンタクト、相手との駆け引きにおける狡猾さなどを含めて「ダメ出し」が連発された。 通訳を介して浴びせられた厳しい言葉の数々。昌子は「なるほどな」と思わずうなずくとともに、意識次第で変えられる、という指揮官からのメッセージをひしひと感じていた。 「外国人の方には日本人の体は細くて弱いと映るだろうし、その上でアジアカップなどの映像などを見た監督は『日本には優しさがあった』と言っていた。要は相手に当たることに対してリスペクトしすぎている、優しく当たりにいって逆にひじ打ちを食らっていると指摘されました。常に強気で、そのなかにリスペクトの精神を持てと言われました」 球際の激しさを問われたときに、遠慮していたという自覚があったのだろう。指揮官から伝授された「ある言葉」が昌子の脳裏からは離れず、いまでは「ピッチの上では人格を変える」とまで言わしめるまでに大きな支えになっている。 「試合が終わってから相手に謝ればいい。試合中は全員が敵だ」 新体制になってからの練習では、アギーレ前政権時代とは変わった光景が続いている。開始前に全員が参加するランニングで、常に先頭に立って後続をけん引していたのが柴崎だった。 「先頭でやるやらないは関係ないですし、自分としてはしっかり意欲を持って、高いモチベーションでやりたいとは思っています」 本音を覆い隠すように務めて冷静に語っても、A代表に対する熱い思いが時折顔をのぞかせる。チームを新陳代謝させていく決意を問われた柴崎は、静かな口調ながらこう語っている。 「若い世代がさらに出てくる時期なのかなと思いますし、僕たちはその中心としてしっかり代表に、それも中心として残っていけるようにしたい」 アントラーズにおいても、柴崎はMF小笠原満男をはじめとする「黄金世代」からバトンを託される新世代の象徴を担ってきた。今シーズンはキャプテンを務めることの多い柴崎の背中を必死に追いかけ、急成長をとげてきた昌子によれば、クールに映る柴崎の内側にはマグマのような情熱がほとばしっているという。 「岳があそこまで走るから、僕たちも走れる。アイツは鹿島の心臓。アイツがいるから、僕たちも『しんどい』とか『疲れた』と言えないんです」 ワールドカップ日韓共催大会の日本代表では実に6人を数えたアントラーズの所属選手は、昨夏のブラジル大会ではついに誰もいなくなってしまった。ようやく名前を連ね始めた2人は、アントラーズだけでなく日本代表に生き残り、3年後のロシア大会へ向けた世代交代をも担っていく役目をも背負う。 「地域と国の違いがあるかもしれないけど、鹿島を背負うのも国を背負うのもどちらも重い。出場したら国際試合だということを特に意識せずに、Jリーグと変わらない(試合への)入りができれば」 昌子の熱い思いは柴崎のそれともシンクロするはずだ。J屈指の名門の屋台骨を支えるプライドと代表戦へかける高揚感とを交錯させながら、22歳のアントラーズコンビはウズベキスタン戦のキックオフを待つ。 (文責・藤江直人/スポーツライター)