まともな候補が一人もいない…元東京都知事が「小池・蓮舫・石丸の三氏はいずれも問題がある」と断じる理由
■「共産党の支援」は蓮舫氏にとってマイナス 蓮舫氏は、自らの党である立憲民主党の推薦のみならず、共産党からも支援を受けている。ただ、共産党に支援されるのにはマイナスの面もある。蓮舫氏はこの点についてどのように考えているのだろうか。 どんな政策でも拒否する政党を「拒否政党」と呼ぶが、共産党は「拒否政党」の典型である。共産党の支援を受ければ、共産党支持者の票は増えるだろうが、自民党支持者を中心とした保守層の票は逃げるし、勝敗に決定的な役割を果たす「無党派層」の票も減る可能性があるだろう。 私が蓮舫氏の選挙参謀なら「共産党推薦」は受けなかっただろう。 ■安芸高田前市長の石丸氏は「台風の目」 都知事選の台風の目となりそうなのが、前広島県安芸高田市の石丸伸二氏である。地方市長からの挑戦であり、新しい風として歓迎されている。 現在41歳の石丸氏は、三菱UFJ銀行に勤務した後、2020年の安芸高田市長選で初当選している。都知事選に立候補するため、6月9日に任期を全うせず市長を辞した。 石丸氏は、SNSで「いびきをかいて、ゆうに30分は居眠りする議員」について発信するなどして、市議会と対立し、全国的に話題になった。 議会の反発に対して、「非公開の会議の席で『議会を敵に回すと政策に反対するぞ』と議員から恫喝(どうかつ)された」とX(旧ツイッター)に投稿し物議をかもした。 さらには、市長選でのポスター制作について、印刷業者から約73万円の代金を踏み倒したとして訴えられている。
■小池氏と蓮舫氏の悪いところを石丸氏も持っている 石丸氏は「市議会との対立」を演出し、メディアの注目を浴びたため、自らの能力と発信力に自信を持ったのであろう。「誤解」をもとに、都知事選へ立候補したわけだ。 しかし、発信力だけで首都の舵取りができるわけではない。ある意味、小池氏と蓮舫氏の悪いところを石丸氏も持っていると見ている。 そもそも、任期満了前に安芸高田市政を投げ出したことを批判されるのは避けられない。 6月6日に行われた市長退任式において、石丸氏は、「4年を振り返るととてつもない充実感がある。できることは全てやりきった」と述べ、小中学校の給食無償化や学校用務員の配置などの成果を誇った。また、「市長としてやるべきことをやったが、議会が否決したものは議会の責任」と述べている。 ■石丸氏はおそらく都議会と対立する もし石丸氏が都知事になり、安芸高田市と同じ手法で、同じ政策をやろうとすれば、都議会との間に抜き差しならない対立が生じるであろう。そうなれば都政は停滞してしまう。 石丸氏は、どの政党からの支援も受けずに、無所属で戦うという。それ自体は結構なのだが、都政運営では議会との関係が重要になる。 さらには、首都である以上、国との関係も重要である。 東京都は金持ちで、政府交付税交付金を受けていない。それだけに、国に先駆けて日本のために必要な改革を実行することができる。しかし、それを可能にするのは国との対立ではなく、協調である。 石丸氏がこの点を理解していなければ、彼の都知事就任によって、東京都は首都としての輝きを失ってしまうだろう。 以上、三者三様、問題点の多すぎる候補ばかりである。 ---------- 舛添 要一(ますぞえ・よういち) 国際政治学者、前東京都知事 1948年、福岡県生まれ。71年、東京大学法学部政治学科卒業。パリ、ジュネーブ、ミュンヘンでヨーロッパ外交史を研究。東京大学教養学部政治学助教授を経て政界へ。2001年参議院議員(自民党)に初当選後、厚生労働大臣(安倍内閣、福田内閣、麻生内閣)、都知事を歴任。『ヒトラーの正体』『ムッソリーニの正体』『スターリンの正体』(すべて小学館新書)、『都知事失格』(小学館)など著書多数。 ----------
国際政治学者、前東京都知事 舛添 要一