JAL「パイロット飲酒問題」で届かなかった現場の警告 副機長はアルコール再検査の前に飲んだ水を機内で嘔吐
「パイロットの飲酒問題について、JALが明かしていないことがある」 日本航空(JAL)のある関係者が言う。「パイロットの飲酒問題」とは、2024年12月1日のオーストラリア・メルボルン発成田行き774便の機長(59)と副機長(56)が乗務前日に過剰な飲酒をしたことにより、出発が3時間以上遅れた問題だ。 【写真】東洋経済の質問に対するJAL広報部の回答文書によると、副機長が吐き出した内容物は「完全に水だった」と機長が確認したという 機長と副機長は出勤予定時刻の約14時間前まで、JALの定める運航規程の3倍以上のアルコール量となるスパークリングワインのグラス1杯ずつとワインボトル3本を飲み干していた。それにもかかわらず、「飲酒はワイン1本」と虚偽の口裏あわせをしていた。
副操縦士を含めて3人いるパイロットのうち、機長は腹痛と偽って出勤を遅らせ、副機長に至っては酒気帯びで出勤した。そのうえ乗員がそろって受ける正式なアルコール検査を実施せず、1人でアルコールが検知されなくなるまで自主検査を繰り返していた。 組合幹部も歴任した副機長は、2018年にもアルコール事案でトラブルを起こしていた。「社内ではいわくつきの人物だった」とJALのOBは語る。 JALは2人をすでに解雇し、国土交通省は「アルコール検査が適切に実施されなかった」などとして昨年12月27日、JALに業務改善勧告を出している。
■検査前に飲んだ水を機内で嘔吐 南正樹運航本部長は昨年の会見で、「悪質な乗務員を組織で管理できていなかった」と反省。そのうえで、「会社の規程では(副機長以外の)他の乗員は『怪しいぞ』と思ったら運航本部に連絡する手順があったが、それがしっかり認識できていなかった」と述べていた。 だが、南本部長が会見で触れなかった事実が、関係者やJALへの取材を通じて判明した。 件の副機長は、機内での客室乗務員らとの出発前打ち合わせの最中、嘔吐していた。それを見聞きした客室乗務員や整備士が、副機長の体調を確認し運航を再考するよう、機長や空港所長に強く進言していたのだ。