ふるさと納税 代理寄付が138自治体に 能登半島地震
過去最多に 被災地が〝お礼〟も
能登半島地震で、被災自治体に代わり「ふるさと納税」の寄付受け付け業務を行う「代理寄付」に手を挙げた自治体が8日現在、過去最多の全国138に上ることが分かった。災害支援のため返礼品がないが、代理の受付額は少なくとも15億円を超えている。2016年4月の熊本地震から始まった取り組みで、大災害に苦しんだ県や市町村に多いのが特徴。今回の地震では、過去に代理してもらったお礼として申し出た自治体も目立つ。 代理業務は15年9月の関東・東北豪雨で被災した茨城県境町が、住民の生活支援やインフラ復旧のためふるさと納税の証明書発行などの業務に手が回らなかった経験を基に、初めて名乗りを上げた。「熊本の自治体も同じ課題に直面していると考えた」といい、これまで11災害で27自治体の代理業務を担った。 境町の取り組みは熊本地震当時、注目を集め、全国の自治体が代理業務を担った。その中に石川県輪島市もあり、同市は今回、熊本県南阿蘇村など当時代理業務を担った5市町村から代理業務の申し出を受けたという。 「村の職員は少なく、自らも被災者だったので、本当にありがたかった。寄付金は村民への災害見舞金にも充当でき、財政面でも助かった。そのお礼の気持ち」。同村の担当者は当時の苦労を振り返ながら語った。 総務省によると、代理業務に国への申請は必要なく、同省も実態を把握していない。仲介大手3社のサイトに掲載されている代理自治体と、サイトを通さずに支援する自治体を本紙が集計したところ、8日現在、4県と43都道府県にある134市町村の計138(複数代理を含めると207)自治体が、石川県と同県内15市町の代理を務めている。 仲介サイトの中で最も代理自治体数の多い「ふるさとチョイス」によると、同サイトを通じて集まった17億2445万円のうち、代理自治体を通じた寄付は13億6164万円と8割弱に当たる。「さとふる」も13億3000万円のうち12%が代理寄付だという。 一方、報道や交流サイト(SNS)で取り上げられる回数の多い自治体とそうでない自治体との間で代理数に開きがあるなどの課題もある。このため茨城県つくばみらい市は「代理自治体数が少なかった能登町と七尾市」への代理を決めた。(糸井里未、栗田慎一)
日本農業新聞