ヤクルト・清水昇インタビュー “日本一”のセットアッパー 「ブルペンにいて電話が鳴って、僕の名前が呼ばれたときは、本当にうれしい気持ち」
すべては心の持ち方
アウトを1つ取るたびに喜びをあらわにし、チームを鼓舞していく姿も印象的だった
日本新記録となるシーズン50ホールドを挙げ、2年連続の戴冠となった。チームのリーグ優勝、さらには20年ぶり日本一に大きく貢献した右腕は、多くの意味で、“日本一のセットアッパー”となった。 取材・構成=依田真衣子 写真=BBM シーズンの半分にあたる72試合に投げ、浅尾拓也(中日=2010年)の47ホールドを抜き、プロ野球新記録となる50ホールドを挙げた。心身ともに疲労は相当なはずだが、清水昇のボールは最後まで力強かった。前年から最も進化したという部分は「心の持ち方」だという。 ――シーズン最多ホールド記録を更新し、チームは日本一に。多くの意味で、清水選手は“日本一”のセットアッパーになりましたね。 清水 ハハハ! そうですね。何て言い表せばいいんですかね……。全力でやっていたら、いつの間にか、って感じでした。 ――全力で投げていたら、シーズンが終わっていた感覚ですか。 清水 シーズン前半は、結構試行錯誤したんですけどね。20年の自分を追い求めるじゃないですけど、20年はタイトルも獲れたし、去年の球、20年の感じを再現したいって意識してしまって。本当の自分の球や自分の感覚が見当たらなかったというか、見つからない感じがしていました。 ――3月26日の開幕戦(対阪神、神宮)で、いきなり敗戦投手になってしまいます。 清水 そうなんですよ。でも僕って、良い思いをするよりも、悪いイメージというか、悪い結果が出たときにこそ、体の状態であったり、ボールが良くなるんですよね。反骨心なんですかね? 「しっかりしないといけない!」という思いが、開幕戦で負けたことで、より強くなりました。 ――心が強いことは、リリーフ投手の条件の一つですね。メンタルケアで、気を付けていることは。 清水 メンタルケアっていうよりも、毎日朝早く球場に来て、体を動かすようにしていました。ランニングするなりウォーキングするなり、体もそうですけど、自分の時間をつくれるので。リセットする時間じゃないですけど、そうすることで気持ちもすっきりしますし、体が「今日も始まるぞ!」っていう状態になっていくというか。その時間をすごく大切にしましたね。 ――20年も最優秀中継ぎ投手のタイトルを手にしましたが、清水選手は「無我夢中過ぎて、手応えも何もない」と話していました。21年はいかがでしたか。 清水 前半戦は正直、20年と同じ感じで、全力でマウンドに上がるっていうのが僕のスタイルだと思い込んでいたんです。でも7月、オールスターに監督推薦で選んでいただいて、いろんな方の話を聞く機会があったんです。山崎康晃(DeNA)さんもそうですし、又吉(又吉克樹、中日→ソフトバンク)さんとか、高梨(高梨雄平、巨人)さんとか。皆さんに1日1日の切り替え方とか、どういうモチベーションでマウンドに上がるか、どういう気持ちで体をつくっていくかっていう話を聞いたんです。「プレッシャーに押しつぶされないですか」、「そのプレッシャーをどうやってはねのけるんですか」って聞いたら、「プレッシャーを楽しむ」という答えが返ってきて。それに一番ビックリしましたね。それまで僕は、重たいプレッシャーを常に感じながらやっていたので。深く聞いてみたら「リードしている場面のマウンドに立てる人って、数少ないでしょ。だったらもっと楽しまないと、もったいなくない?」って。 ――ピンチを楽しむことで、心に余裕が生まれるんですね。 清水 それを学んだのは大きかったですね。あと、ブルペンでの過ごし方。僕はブルペンで投げるときから、状態を100にするイメージで肩をつくってきていたんですけど、皆さんが投げているところを見ると、僕の観察では100じゃなくて80%くらいで投げているように見えたんです。バランスよく、力み過ぎず。でも、マウンドに行ったときには100%。そういう力の加減や調整をすごく勉強させてもらいました。そのあと、リーグ戦中断期間に入ってエキシビションマッチがあったので、オールスターで学んだスタイルを試してみたら、はまるものがあったんですよね。 ――ブルペンで力を抑えられているからこそ、マウンドで120%が出せる、と。 清水 そうだと思います。僕はそういうつもりでやってます。それからの後半戦は、感覚的にはすごく良かったですね。 ――高津臣吾監督の方針で、中継ぎは3連投までが基本でした。9月下旬から4連投が解禁。このときも、疲労はありませんでしたか。 清水 あまりなかったですね。10月の、大事な6連戦(5日から神宮で3位の巨人、2位の阪神と6連戦)があったじゃないですか。 ――清水選手は、6試合中5試合に投げて無失点でしたね。 清水 はい(照)。あのときは・・・
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週刊ベースボール