仕事の先延ばしグセは時間帯を見直すことで回避できる(滝川徹 時短コンサルタント)
『細分化して片付ける30分仕事術 (滝川徹 著)』
ある仕事に取り組もうと思ったのに、つい先送り・先延ばしをしてしまう。そんな時、自分はなんて意思の力が弱いのだろう。そう自責する人も多いだろう。しかし先送りしてしまう本当の原因は、実は仕事に取り組む時間帯・タイミングにある。 そう語るのは時短コンサルタントの滝川徹氏。今回は、滝川氏の著書『細分化して片付ける30分仕事術 』より再構成して、つい仕事を先送りにしてしまう原因を、脳科学の観点から解説します。
■︎脳科学で考える時間のとらえ方
人は何かしらの作業に着手したり、物事を考えたり、意思決定をするときに脳のエネルギーを使っていると考えられている。ちなみにこの「脳のエネルギー」はタスク管理界隈では「認知リソース」などと呼ばれている。なのでここでは認知リソースと呼ぶことにする。 認知リソースは限りある一種の資源だ。起床直後がフル(満タン)の状態で、朝起きてから時間の経過とともに、何もしなくてもどんどん消費されていく。 認知リソースはタスク管理界隈では有名なゲーム「ドラゴンクエスト」のMP(マジックポイント)にたとえられている。たとえばドラゴンクエストでは一番弱い火炎呪文の「メラ」を使うより、一番強い火炎呪文である「メラゾーマ」を使うほうがMPを消費する。 これと同じでタスクに取り組むときや物事を考えたりするときも、その内容によって認知リソースの消費量も変わるのだ。 簡単な事務処理作業に取り組むより、頭を使う企画書作成のほうが認知リソースを消費する。またMPがなくなったら魔法が使えなくなるように、一定の認知リソースがなければタスクに集中して取り組めず、結果的に先送りしてしまう。 以上のことから、認知リソースとタスクの先送りの関係については次のことが言える。 ・朝の早い時間帯は認知リソースがたくさんあるので、タスクの先送りをしにくい ・時間の経過や何かタスクに取り組む毎に、認知リソースは減っていく ちなみに認知リソースを回復する手段は睡眠しかないと言われている。昼寝が「パワーナップ」と呼ばれる所以がこれだ。仕事が思うように進まないときは少し仮眠を取ることで認知リソースを回復することができる。このことも覚えておこう。 認知リソースの仕組みを味方につけて、同じタスクでも取り組む時間帯やタイミングを変えればいい。「企画書作成」という集中して取り組む必要があるタスクなら、夕方ではなく午前の早い時間帯に取り組むほうがよい。 午後になれば君はそれなりに認知リソースを使ってしまっている。その状態ではいざ「企画書作成」に取り組もうとしても、やる気がおきず「あとでやろう」と先送りしてしまう可能性が高まってしまう。 消費MPが多いタスクは先送りを防ぐためにも、1日のできるだけ早い時間帯に取り組むのがよいのだ。 一方「経費処理」をはじめとした、あまり頭を使わないような単調な作業は消費MPも少なく先送りはしにくい。こうしたタスクはMPがほとんど残っていない夕方の時間帯でも取り組むことができる。 どの時間帯に取り組んでもいいなら、わざわざ午前中のような認知リソースが豊富にある貴重な時間帯に取り組む必要はないのだ。