地域雑学マンガ作者に聞く ご当地本出版のメリットは?
愛知県名古屋市に関する雑学を漫画で紹介する「マンガ うんちく名古屋」(KADOKAWA)が「地元民が読んでも楽しめる」と話題を呼んでいる。著者は同市在住で、不登校だった自身の経験をテーマにした「学校へ行けない僕と9人の先生」(双葉社)で注目を集めた漫画家、棚園正一さん(33)で「地元再発見のきっかけになればうれしい」と期待を込める。マンガうんちくシリーズの地域編としては、北海道と埼玉に続く3作目。地域編出版への背景を探ってみた。
依頼を受けてから約半年で仕上げたストーリー
同作品は、名古屋を愛しすぎてさまざまな場所でうんちくを語るという設定の主人公、雲竹雄三(うんちくゆうぞう)が、名古屋に関するエピソードを全13話紹介するというもの。 このうち「名古屋嬢ナナちゃん」のストーリーでは、名古屋の代表的な待ち合わせスポットである名鉄百貨店本店(同市中村区)に設置されている身長6メートル10センチのマネキン人形「ナナちゃん」について、頑丈な作りや、広告塔としてさまざまな衣装を身につけた過去などを紹介。他のストーリーでは名古屋の歴史や観光名所、名古屋メシなどの食についても取り上げている。 棚園さんは、依頼を受けてから約半年で仕上げた。ストーリーの題材は、編集プロダクションが調査したものから選定。「本物の景色を描こう」という自身の考えから、描くと決めた場所を自転車で巡ってカメラ撮影する取材も行った。その様子は本作の一コマにも描かれている。 本作については「情報の羅列にならないように、主人公の雲竹雄三をぶっ飛んだキャラクターに仕立てて、マンガとして楽しく読めるようにした」と工夫した点を述べ、「自分も知らないような雑学があったので、地元名古屋の人が読んでもおもしろいのではないか」と話している。
地域の雑学を漫画で、幅広い世代に
同作品を担当したKADOKAWAの宮武芳江さん(40)は「地域を紹介するご当地本は、その地域の書店に長く置いてもらえる」と、ご当地本出版の利点を説明する。 宮武さんによると、これまでに出した北海道編や埼玉編も、それぞれの地域の書店を中心に「多く扱ってくれた」という。ロングセラー作品になり、本も目立つところに陳列されることが多い。 ただ、ご当地本はスポットを当てる地域の選定に気を遣うという。本作の名古屋も含む3地域に共通するのは「地元愛が強く、住んでいる人や関係する人、関心が向く人が多い地域」という点。ご当地本は地元愛が強い地域でよく売れる傾向があるため、地元愛の強さが、ご当地本の地域選定の鍵になるという。 名古屋編を描いた棚園さんは、自ら名古屋市周辺の書店60カ所以上を巡って、PR活動をしたことを振り返りつつ「地元の漫画家が書いた本ということで、書店の人たちは温かく迎え入れてくれて、応援してくれる」と、名古屋に住む人の地元愛の強さを感じた様子だった。 次作については「未定」という宮武さん。「地域の雑学を漫画で読めるので、幅広い世代の人が手に取ってくれる。今後も続けたいシリーズ」と力を込めた。 (斉藤理/MOTIVA)