前作対比112%「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」の過去最高スタートの仕掛けに迫る
劇場版「名探偵コナン」の最新作となる第27作「100万ドルの五稜星」が4月12日に封切られ、初日の興行収入9.6億円・動員63万人、初週3日間で興収33億円・動員227万人という歴史的大ヒットスタートを切った。歴代最高だった前作「黒鉄の魚影」(興収138.8億円)の対比112%というシリーズ史上最大のオープニング興収となり、最終的な興収がどこまで数字を伸ばせるかにも注目が集まっている。 【動画】歴史、ミステリー、冒険、そしてアクション「名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)」予告編
〝入プレ〟を行わない
昨今の劇場映画の施策として邦画・洋画・アニメ等にかかわらず「入場者プレゼント」を週替わりで実施して集客にブーストをかけるものがあるが、こと劇場版コナンにおいては〝入プレ〟を行わない。つまり、特典目当てで劇場に足を運ぶ観客が存在しないのだ。そもそも原作は今年連載30周年を迎えた長寿シリーズであり、劇場版も27作品目。にもかかわらず年々数字を積み上げているのは驚異的だ(親子3代でのファンも少なくないと聞く)。長く続いてもファンが縮小したり代替わりしたりするどころか増えていく――そういった意味でも、「名探偵コナン」という作品自体のコンテンツ力の強さをうかがわせる。
満遍なく拾えている印象
漫画のメディアミックス作品においては原作ファンが必ずしもアニメ等に流れるわけではなく、逆もまたしかりだが、劇場版コナンの場合は「原作ファン」を中心とするコア層、そして「劇場版オンリー」のライト層も満遍なく拾えている印象だ。本稿ではそうした視点で、「100万ドルの五稜星」に施された〝仕掛け〟を見てゆきたい。
事前に試写会を行わない
まず本作においては、事前の一般向け試写会を行わない形が取られた。劇場版コナンほどのビッグタイトルとなれば全国主要都市で試写会を行い、〝見せ込み〟を行うことで口コミを加速させ、公開日に向けた盛り上がりを作っていくのが通例。しかし「100万ドルの五稜星」においては、事前に試写会を行わないというアナウンスがなされた。前作「黒鉄の魚影」の試写会で一部の観客がネタバレを行ってしまったのも大きいだろうが、そうした事情があってもネガティブな告知にはせず「今回は怪盗キッドの秘密が明かされるため行わない」と〝 それだけすごい内容になる〟と観客をあおりつつ、しかも〝試写状を怪盗キッドに盗まれた!〟という建て付けにしてファン心をくすぐるプロモーション戦略もうまい。