いつの間にか「グルメ」「旅」「仰天事件簿」ばかりに…テレビが本当につまらなくなった
コア視聴率の導入が影響
テレビを観る人が減っているのはなぜか? 2020年4月、世帯視聴率に代わって個人視聴率が標準化され、同時に民放各局とスポンサーはコア視聴率(年齢層を13~49歳に絞った個人視聴率)を重視するようになったが、これが大きく影響しているのは間違いない。 現在の日本の人口は約1億2000万人で、そのうち50代以上は約5800万人。つまり2人に1人は50代以上なのだが、その世代に向けた番組はコア視聴率時代の到来で激減した。 時代劇やドキュメンタリー、2時間ドラマなどである。観たい番組が減った50代以上はテレビと向き合う時間が少なくなるから、PUTは当然下がる。 この春に始まったプライム帯の連続ドラマは16作品あったが、やはり50代以上の視聴者も意識したと思われる作品は数少なかった。 TBS「日曜劇場 アンチヒーロー」(日曜午後9時)=6月9日放送の第9回の視聴率は個人7.0で週間1位、コア4.0%で同1位、テレビ朝日「Believe -君にかける橋-」(木曜午後9時)=同6日放送の第7回は個人5.4%で同2位、コア1.7%で同9位など6作品ぐらいである。 一方、同じく春から始まった非ドラマの番組は6本。うち2本は音楽番組で内容はコア層に傾いている。残る4本は情報色のあるバラエティーだが、いずれも軟派調。かつてTBSが放送していた「そこが知りたい」(1982~97年)のように50代以上にも歯ごたえを感じさせる硬派調の情報番組はない。 非ドラマの新番組の視聴率も見てみたい。フジテレビ「街グルメをマジ探索! かまいまち」(木曜午後8時)の5月30日放送は個人2.6%、コア2.4%。日テレ「世界頂グルメ」(水曜午後10時)の6月5日放送は個人3.3%、コア3.2%。軟派調が功を奏したようで、両番組のコアは平均点以上である。ただし、全体値である個人視聴率は低調。50代以上があまり観ていないからだ。 50代以上は不本意だろうが、民放がコア層を重視するのは無理もない。昨年度の日テレとテレ朝の個人視聴率はほぼ同じだったものの、CM売上高は大きく差が付いた。日テレは在京キー局の中で断トツの約2192億円。テレ朝は約1668億円にとどまった。 日テレのコア視聴率がトップだったのに対し、テレ朝はTBSとフジにも敗れてしまい、4位だったからである。スポンサーがコア層を強く望んでおり、それに応えられなかったら、業績は伸びないのが実情だ。 もっとも、コア層をターゲットにしながら、狙い通りにコア視聴率が獲れている番組は少ない。連ドラは特にそうだ。これも全体値であるPUTが下がった理由だ。各局はコア層が何を望んでいるのかを掴めていないのではないか。 たとえばフジの連ドラ「イップス」(金曜午後9時)である。ライトコメディタッチの推理ドラマで、コア層狙いなのは明白だ。 しかし、4月12日放送の第1回の視聴率こそ個人3.3%(週間7位)、コア1.8%(同)と平均的だったものの、6月7日の第9回は個人1.9%(同13位)、コア0.8%(同14位)。コア1%以下は、日本テレビの主婦向け情報番組「情報ライブ ミヤネ屋」(月~金曜、午後1時55分)以下で、プライム帯の連ドラとしてはかなり深刻だ。 主演の篠原涼子(50)のキャラクターが過去の焼き直しとしか思えず、新鮮味がなかったのが一因だろう。それより大きかったのは脚本の弱さ。殺人の動機は緩く、トリックも甘かった。ギャグのキレもなく、笑えなかった。