欧州最大のゲームショウ「gamescom」ディレクターに直撃取材。大規模エンタメイベントはどのように成功を収めた?【インタビュー】
ドイツ・ケルンにて、8月21日から8月24日にかけて大型ゲームイベント「gamescom 2024」が開催されました。日本からの物理的距離は9,000km以上、Game*Spark編集部&記者も現場まで約12時間かけて渡航……ということで、日本のゲーマーにとって「gamescom」現地の熱気は想像しにくいところもあるのでは。 【画像全12枚】 読者の皆様であれば「Summer Game Fest」や「The Game Awards」と共に毎年の開催を楽しみにしていると思いますが、なんと言っても「gamescom」の特徴は欧州最大級のゲームイベントであることです。欧州では他に類を見ないゲームのお祭りということで、この度Game*Sparkは「gamescom」のディレクターを務めるティム・エンドレス氏(以下、敬称略)にインタビューを実施。今回注目されていた見どころや他の大手ゲームイベントとの違い、今後の運営方針などについて話してもらいました。 ――「gamescom」は2020年と2021年のオンライン実施を含め今年で16回目の開催となりました。本年度の最大の見どころは、どのようなものだったでしょうか。 ティム・エンドレス: 今年の「gamescom」は、見どころ、記録、プレミアでいっぱいでした。ひとつずつお答えしましょう。来場者レベルでは、ケルンで335,000人の来場者を迎えられたことは、展示された新作ゲームを楽しんでいる幸せそうな顔を見るのと同様に、ハイライトであったことは間違いありません。記録について言えば、私たちのデジタル・リーチは、「gamescom」の土曜日の夕方までに3億1000万ビューを記録しました。そのうち4,000万回が「gamescom Opening Night Live」に関連したもので、昨年のイベントの2倍の数字を記録しました。 また、プレミア・パートでは、2024年に初めて立ち上げたカード&ボード・エリアが成功したことは素晴らしいことでした。このエリアの出展者はすべて、これまでのところ好意的なフィードバックを送ってくれており、コミュニティは展示されたトレーディングカードやボードゲームを試す機会を得て、全体的な雰囲気は「gamescom」に完璧にフィットしていました。 ――33万5,000人という来場者数について、どのような印象を持たれましたか? ティム・エンドレス: 私たちにとって、現地での来場者数は成功の中心的な基準ではありません。もちろん、リアルイベントに来場したいという全体的な需要があることは非常に良いことですが、私たちにとっては、滞在の質の方がはるかに重要なのです。335,000人のゲストが「gamescom」で楽しい時間を過ごせるように、私たちは多くの異なるフードスポットを提供したり、これまで以上に多くの座席を用意したり、デジタルの行列システムを提供したりと、会場を歩き回り、数時間並ぶことなくブースやサイン会でデジタルチケットを使ってチェックインできるよう、細心の注意を払いました。 ――2023年度は記録的な出展社数となっていましたが、改めて本年度の出展社数についてお聞かせください。また、その出展社数に達した理由や要因についてどう考えていますか? ティム・エンドレス: 今年の「gamescom」では1,462社が出展し、新記録を達成しました。この記録達成の理由のひとつは、国別パビリオンの国際的な参加数が過去最高であったことです。37カ国から48のパビリオンが出展され、複数の小規模なスタジオが、今後のタイトルやプロジェクトを来場者、ジャーナリスト、クリエイターに紹介する機会を得ました。 出展者数が増加したもう一つの理由は、「gamescom」に参加することで企業が見出す可能性です。なぜなら、「gamescom」に参加することで、335,000人の来場者だけでなく、世界中にいる何百万人ものファンにアクセスできるからです。「gamescom Opening Night Live」「gamescom awesome indies」、そして私たちの「gamescom studio」など、ジャーナリストやクリエイターがもたらすリーチに加え、あなたのプロジェクトにビジビリティを提供するプラットフォームがいくつもあります。 「gamescom」に参加することは大きなチャンスです。あなたのコミュニティとつながり、新しいファンを見つけ、即座にフィードバックを得て、あなたとプロジェクトの成長を助けてくれる他の業界専門家と新しく興味深いつながりを見つけることができます。 ――2024年度において注目していた「欧米圏の大手ゲームメーカー」「アジア圏の大手ゲームメーカー」「インディーゲームメーカー」をそれぞれ理由と共に教えてください。 ティム・エンドレス: 私たちは、特定のパブリッシャーやスタジオを強調したいわけではありません。「gamescom」は、すべてのパブリッシャー、スタジオ、開発者、そしてゲーム全般を取り巻くすべてのコミュニティのためのプラットフォームであると理解しています。私たちにとって重要なのは、「gamescom」に参加する人々や企業をサポートし、力を与えるための適切なオファーを用意することです。 企業にとっては、ニュースを共有したり、制作に関する見識を深めたり、新しいゲームを発表したりする場所や機会を、物理的なイベントの枠をはるかに超えた世界中の聴衆に提供することを意味します。 業界関係者向けには「gamescom」開幕前に開催される「devcom Developer Conference」があり、新たな刺激や人脈を得る最初の機会となっています。また、「gamescom biz」も実施しました。このアプリを使えば、来場者と出展者がお互いにつながってイベント中に出会い、様々な形でお互いの成長を助けることができます。 ――コミュニティへも注力するということでしたが、一般ユーザー向けに展開する催しの中でも特に注目していたものについて教えてください。 ティム・エンドレス: 個人で来場されたお客様にとって、今年のハイライトのひとつは、様々なエリアが用意されていることでした。コスプレビレッジ、インディーズゲームを集めたインディーズエリア、レトロエリア、物販エリア、エンターテインメントエリアなどなど。また、コンテンツクリエイターのためのソーシャルエリアもあります。このエリアでは、「gamescom」ソーシャルステージが初めて設置されました。木曜日から日曜日まで、ゲームやアニメのサウンドトラックをピアニストが生演奏するステージや、クイズショー、紙とペンを使ったセッションなど、様々なプログラムを用意しました。 毎年恒例となっているのがコスプレコンテスト。ベストコスチューム、ベストメイク、ベストアーマーなど、全6部門でトップクラスのコスプレイヤーが競い合います。私たちのウェブサイトでは、すべての受賞者を紹介していますので、ぜひご覧ください。どの作品も素晴らしく、ステージ前のファンからは大きな歓声が上がっていました。 ――「Summer Game Fest」や「The Game Awards」に並ぶ大規模ゲームイベントとして日本のゲーマーからも認知されていますが、他イベントと比べた上で「gamescom」はどのような立ち位置を目指していますか。 ティム・エンドレス: 「gamescom」はゲームとゲーム文化の世界最大のイベントです。「devcom Developer Conference」も含めると、丸一週間開催されるイベントでもあります。また、東京ゲームショウのような他のイベントや、ゲームアワードのようなショーと比較するつもりはありません! 私たちにとって最も重要なことはイベントが終了した今、様々なコミュニティからフィードバックを集め、今年の「gamescom」で本当にうまくいったこと、そして来年に向けて変更する必要があること、あるいは初めて実施することを特定することです。イベントとして毎年改善し、ゲーム業界が持つ速いペースに対応し、彼らのニーズに応え、現場やオンラインのファンに新しいゲームを紹介する理想的なプラットフォームを構築したいと考えています。 ――今後、「gamescom」をどのようなイベントに成長させたいと考えていますか。 ティム・エンドレス: 私たちは「gamescom」を常に業界の要求とニーズに応え、新しいプロジェクトや今後のプロジェクトを紹介するための最高のプラットフォームを提供する場にしたいと考えています。これが具体的にどのようなものになるかは、誰にも分かりません。というのも、2年間もオールデジタル化しなければならないようなパンデミックに見舞われるとは、誰が想像したでしょうか? しかし、この柔軟性こそが「gamescom」の特徴であり、私たちが将来に向けて保持しなければならないものなのです。 ――2020年からは「gamescom asia」がスタートしました。その手応えはいかがでしょうか? また日本を含むアジア地域でさらに「gamescom」ブランドを浸透させていくような施策は考えていますか? ティム・エンドレス: サテライトイベントである「gamescom asia」と「gamescom latam」では、ケルンからのデジタルショーでしか「gamescom」を体験したことのない他の地域にもイベントを届けたいと考えています。「gamescom asia」について言えば、これまでのところ、このイベントに対する反応は素晴らしいです。「gamescom asia」は、「gamescom」の特徴と、東南アジアのゲーム業界の特別な要求の両方を兼ね備えたイベントです。 昨年は、個人の来場者が初めて「gamescom asia」を訪れ、圧倒的な反響を得ました。今年はどのようなイベントになるのか、また、どのようにイベントを発展させ、ファンにとってもトレードビジターにとってもさらに興味深く価値のあるものにできるのか、非常に楽しみにしています。多くの日本のファンの皆様に「gamescom asia」にお越しいただき、「gamescom」のイベントを体験していただければ幸いです。ぜひ、多くの方々に「gamescom」のイベントや様々なデジタルコンテンツをお楽しみいただきたいと思います。 ――「gamescom」は無事に再開できましたが、カメラ&写真の見本市として世界最大の規模だった「フォトキナ」がコロナの影響でなくなったままだと思います。現在の運営にはどのような影響が出ているのでしょうか。 ティム・エンドレス: パンデミック後の「gamescom」の成功の一部は、私たちが開催を決して止めなかったことです。2019年の「gamescom Opening Night Live」で、私たちはデジタルイニシアティブの第一歩を踏み出し、2020年と2021年にはそれをさらに強化しました。 「gamescom awesome indies」や「gamescom epix」のような多くの新しいフォーマットはこの時期に生まれ、今日まで続いています。パンデミックの数年間は困難な時期でしたが、そのおかげでデジタル基盤を構築することができ、「gamescom」の土曜日の夕方まで、3億1,000万回のデジタル視聴を記録することができました。この間、私たちは多くのことを学び、コミュニティと連絡を取り合い、さまざまなコミュニティのために新しいフォーマットを作る機会を得ました。 ――コロナ禍に落ち着きが見られているものの、大規模イベントには依然として感染症リスクが存在していると考えいます。本年度の「gamescom」においては、どのような形で対策を講じていますか。 ティム・エンドレス: 私たちは常にすべての公的機関と緊密に連絡を取り合い、お客様に最高の安全性をお約束するために何ができるかを検討しています。マスクの着用と、定期的にトイレで手を洗うことをお勧めしています。今後、感染症のリスクが再び高まるような事態が発生した場合には、「gamescom」の来場者全員の安全を確保するため、さらなる対策を講じる所存です。この点に関しては、公的機関に評価を委ねます。 ――「gamescom」は日本のコアゲーマーからも期待されているイベントですが、イベント全体の雰囲気や現地のゲームファンの熱気について窺い知る機会は非常に限られています。最後に、「gamescom」ならではのユニークな魅力を日本のゲーマーに向けてアピールしてください。 ティム・エンドレス: 「gamescom」は、ゲームとゲーム文化の世界最大の祭典です。「gamescom」のように、ゲームファンの文化やコミュニティの様々な側面を見たり感じたりできる場所はありません。あなたがゲームにまつわるコスプレ、アニメ、グッズ、コンテンツクリエイター、あるいはボードゲームや“AAAゲーム”だったり“インディーゲーム”のどれが好きだったとしても、「gamescom」はぴったりの場所とコミュニティを提供します。 様々なホールを歩いていると、世界中から集まったグループ、初対面でありながら何年も前からお互いを知っている人たち、プレイしたばかりのゲームについて熱く語り合う人たちなど、たくさんの人々の笑顔を見ることができます。「gamescom」はファンのために作られた特別な場所であり、これほど世界最大のコミュニティの一員であることを実感させてくれるイベントは他にはありません。 もし来年、ケルンに来る機会がある読者がいたら、ぜひこのゲームとゲーム文化の大規模な祭典を体験してもらいたいですね。それは魔法のようです。 ――ありがとうございました。 欧州最大のゲームイベント「gamescom 2024」関連記事をチェック!
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