3.11大震災で傾いた店 取り壊し覚悟の窮地から再開までの苦労とは
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的に、政府は10日、大規模なイベント自粛をさらに10日程度延長するように要請した。千葉県浦安市にある「東京ディズニーランド」と「東京ディズニーシー」などを運営するオリエンタルランドは翌11日、両パークの休園期間を4月上旬まで延長することを発表した。 【写真特集】湾岸エリアが液状化「3.11」直後の舞浜(千葉県浦安市) 振り返れば9年前のちょうど今頃も、両パークは休園状態にあった。東日本大震災の影響で、埋め立て地が市域の約4分の3を占める浦安市は大規模な液状化現象に見舞われたためだ。被害は特に市内の湾岸エリアで目立った。両パーク自体は、建設時に液状化対策として「サンドコンパクションパイル工法」と呼ばれる地盤改良を実施していたため、被害を免れた。しかし、駐車場や最寄りのJR京葉線舞浜駅近辺は被害を受けた。 また、隣のJR京葉線新浦安駅のそばでは建物が傾いてしまい、しばらく営業休止に追い込まれた店もあった。創作料理の店として地元の人々に親しまれる「ダイニング夢」(当時は串焼きがメインの『串ダイニング夢』)もそんな店の一つだ。「一刻も早く営業を」と奔走した下野政春さん(56)に、妻・千賀子さん(58)と営んできた店を再開するまでの苦労を振り返ってもらった。
最初は水道管破裂かと思った液状化
地震発生の2011年3月11日午後2時46分頃、下野さんは近くのスーパーで買い出し中だった。急いで2階部分が自宅の店舗兼住宅へと向かったが、途中、雨が降ったわけでもないのに、行きとは違いそこら中が水浸しとなった街の様子に唖然とした。 「はじめは水道管の破裂かと思いました。でも、それにしては泥がだいぶ含まれていたので変だな、と感じた記憶があります。そして、店が見えた瞬間、建物が傾いているのがわかりました。ウチは近隣の建物と田んぼの田の字状に4軒建っていたのですが、4軒全部が真ん中に向かって傾いていたんです」 地震発生から3日間ほどは情報も入ってこず、状況を把握することさえままならなかったと振り返る。 「何が、どうして、どうなっているのか。まったくわからない状況でした。とにかく泥があまりにもひどくて、まず目の前の泥からどうするか、で頭がいっぱい。店の再開なんて考えられる状況ではなかったですよ。2階の住居部分に上がってみると、自分が歩く震動で建物全体が揺れる。『とてもじゃないけどこれじゃ取り壊しだな』『ローンはどうすればいいんだろう』と真っ青になっていました」