海外投資好きの富裕層に、香港・シンガポールの銀行「マルチカレンシー口座」が根強い人気のワケ【国際弁護士が解説】
途上国・新興国に暮し、香港やシンガポールの銀行で資産管理
最近では、海外に暮し、フリーランスで仕事をする人も増えています。 「金融ハブ」でもある香港・シンガポールへ移住し、現地に会社を作り、現地の銀行に法人口座あるい個人口座を開き、その口座を活用して投資をするのは、とても使い勝手のいい方法です。 では、発展途上国や新興国に移住する場合はどうでしょうか? たとえば、新興国のタイの首都バンコクは、日本人が5万人以上も暮らし、高級ショッピングモールからドン・キホーテまで立ち並ぶ、日本人が住みやすい都市です。 ところが、海外送金の自由化はまだまだです。送金によってはタイ中央銀行の事前承認が必要で、取引との関連のない海外送金は、年間5万ドル(約750万円)という上限があります※。 ※ 参考:JETRO「タイの為替管理制度について」( https://www.jetro.go.jp/world/asia/th/trade_04.html ) そのため、タイに暮していても、自分の資金の管理をタイ国内で行うのは考えものなのです。むしろ、タイ国内の銀行には家賃など普段の生活に必要なだけ入れ、まとまった資金は香港やシンガポールなどの金融ハブの銀行で管理するほうが便利だといえます。
香港とシンガポール、どちらの利便性が高いのか?
ここまで、香港やシンガポールの銀行のメリットを説明してきましたが、香港とシンガポールを比べた場合、どちらがよいといえるのでしょうか? 筆者自身、香港とシンガポール両方の銀行口座を保有・活用していますが、どちらの口座も同じレベルで、甲乙つけがたい便利さだという印象です。 ただし、口座の開設しやすさはかなり違います。 【個人口座開設の場合】 香港居住者が香港で口座開設する、シンガポール居住者がシンガポールで口座開設することは、もちろん可能です。非居住者の場合、香港非居住者が香港で口座開設するのは、楽ではありませんが十分可能です。一方、シンガポール非居住者がシンガポールで口座開設するのは、絶対に無理ではないものの、非常に厳しいというのが現状です。 【法人口座開設の場合】 香港法人が香港で口座開設するのは、香港在住の取締役がいれば十分可能です。一方、シンガポール法人がシンガポールで口座開設するのは、これまで取り扱ってきた複数ケースから見て、香港に比べてハードルが高いというのが筆者の印象です。 口座開設にかんしては、トータルで見た場合、香港のほうがシンガポールに比べ、ハードルが低いと感じます。 このような違いはありますが、香港・シンガポールとも、使い勝手のよい金融ハブであることには変わりありません。ぜひ使いこなしていきましょう。 小峰 孝史 小峰 Investments マネージング・ディレクター・弁護士
小峰 孝史,OWL Investments