プロ野球界で実働29年!工藤公康「自分の体のことは自分で知らなければ…」長く現役を続けるための“コンディショニング論”とは?
◆アメリカの野球は最先端?
藤木:今と工藤さんの現役時代とでは、トレーニングに対する向き合い方、向上心は変わってきていますか? 工藤:変わっていますね。今では、例えば、SNSなどでいろいろな情報を手に入れたりできますし、僕も現役中に海外に行ったりしていましたけど、なかには海外でいろいろな理論を学んでから帰ってくる選手もいるので。 海外の情報って、ある程度は僕のところにも入ってくるんですけど、やっぱり情報だけでは、実際に行った選手と差が出ちゃうんです。だから僕は、オフシーズンのあいだに「監督、どうせ知らないんでしょ?」とか言われないように、その選手が実際に行ったり、注目している施設を全部見に行って、そこでの理論や考え方を聞いて「なるほど。こういうものを使うと、こんなことがわかるんですね」とちゃんと理解するようにしていました。だから、やっぱり情報がすごく大事になりますね。 藤木:「2023 WORLD BASEBALL CLASSIC」は日本が優勝しましたが、それでもやっぱりアメリカの野球が最先端なのですか? 工藤:アメリカの野球って、いろいろな器具を使ってさまざまなデータを出せるんですよ。今(MLB・メジャーリーグベースボールは)30球団でやっているんですけど、例えば、これは本当に一部のトレーナーしか見ることができないんですけど、どういうふうにリハビリをして復帰したか、ということを30球団共同で共有しているんです。自分たちのチームで同じようなケガをした選手を早期回復させるために。 藤木:それは日本のプロ野球界もぜひ取り入れてほしいですね。 工藤:それがなかなかできないんですよね。情報漏洩というわけではないんですけど、やっぱり“(他球団と情報を)共有する”というのがなかなか難しい状況です。 藤木:なるほど、相手の戦力が、ある程度筒抜けになってしまう可能性もありますもんね? 工藤:それもそうなんですけど、悪いことだけを考えちゃうと何も踏み出せないんですよね。そうではなくて、もっと良いことをみんなで共有できるようになってくると、例えば“ケガをしない方法”だったりも(確立されてくる)。 あと、時期によって“ケガをしやすい部位”というのもあるんです。メジャーでは“シーズンの序盤、中盤、後半でどんなケガが多いのか”というデータも出しているんですよ。そうすると、選手もそこに気をつけながらキャンプやオープン戦を過ごすことができるので“ケガ予防”という意味でも非常に大事かなと思います。しかし、日本にはまだそのシステムがないので、そういうところはアメリカが優れている部分じゃないかなと思います。 (TOKYO FM「SPORTS BEAT supported by TOYOTA」2024年6月22日(土)放送より)