森保J主力級ズラリ「今夏の移籍注目イレブン」 三笘&久保、タレント並ぶ2列目…DFも欧州で評価急上昇【コラム】
パリ五輪エース期待の細谷ら国内組の挑戦にも注目
最もタレントが充実する2列目は久保建英(レアル・ソシエダ)、鈴木唯人(ブレンビー)、そして三笘薫(ブライトン)の3人。FC東京からスペインに渡り、6年間に渡り戦ってきた久保はレアル・ソシエダ3シーズン目にして、複数のメディアで“ラ・リーガ”のベスト11に選出されており、クラブが来季のチャンピオンズリーグを逃したことからも、ステップアップを後押しする形になるかもしれない。 ソシエダとは2029年までの長期契約が伝えられるだけに、相応の移籍金が必要となるが、下部組織に在籍していたバルセロナ移籍が、ここで実現するかは注目だ。ただ、現地メディアではリバプールの強い関心も伝えられており、本腰を入れてくれば資金力ではアドバンテージを握りそうだ。一方で古巣のレアル・マドリーはイングランド代表MFジュード・ベリンガムなど、欧州制覇したメンバーがそのまま主力にとどまるうえに、フランス代表FWキリアン・ムバッペの加入が確実と見られており、仮に復帰したとしても久保が居場所を見出しにくい。 6月のA代表にも招集された鈴木唯人はデンマーク1部で9得点7アシスト。この1年間で、最も株を上げた若手選手の一人であり、主に5大リーグのクラブによる争奪戦が予想される。その中にはサッカーファンなら誰でも分かるクラブが浮上しているが、やはり現実的に、新シーズンの開幕時から主力として活躍が見込めるクラブに行くべきか、多少リスクはあってもビッグクラブに身を投じていくかが焦点になるかもしれない。 三笘薫は飛躍の昨シーズンから打って変わり、怪我に泣かされたシーズンとなった。ブライトンもプレミアリーグで11位に終わり、欧州カップ戦を逃す結果に。現在の主力も大幅な入れ替えとなる可能性もある。その中で、三笘に関しては欧州の移籍専門メディア「トランスファーマルクト」での市場価値も当時より下落してしまったが、見方を変えれば“買い時”とも言える。現地メディアでは元横浜F・マリノスのアンジェ・ポステコグルー監督が率いるトッテナムや退任が決まった“恩師”のロベルト・デ・ゼルビ監督が就任する噂のあるマンチェスター・ユナイテッドなども候補になるが、怪我のリスクをどう見るかも各クラブの判断材料になるかもしれない。 FWは2列目に比べると、移籍が決定的という選手が見当たらない。状況を考えれば古橋亨梧(セルティック)が有力となるが、2027年まで契約を結んでいる古橋をクラブが安売りする必要はなく、基本的に移籍金で利益を得る体質のクラブではないことが、ステップアップを難しくするかもしれない。移籍の可能性ということではドイツ1部残留に大きく貢献した浅野拓磨(ボーフム)の方が高い。スプリント回数や守備面の貢献など、ドイツでの評価は高い浅野だが、FWとして残している数字を重視すると、国外へのステップアップが実現するかどうかは想定が難しいところで、やはりドイツ1部のクラブが現実的か。 そのほか、欧州初挑戦でいきなり2桁得点をマークした日本代表FW小川航基(NECナイメヘン)やゴール量産で“古豪”リーグ・アン昇格を牽引したオナイウ阿道(オセール)、一時は壁に当たりながらもキールのドイツ1部昇格に貢献した町野修斗といった選手も価値を上げているはずだが、移籍のタイミングとしては強く推しにくい。また今回はイレブンに入れなかったが、パリ五輪代表のエースとして期待される細谷真大(柏レイソル)など、Jリーグ組の新たな欧州挑戦があるかどうかは夏の注目どころだ。 [著者プロフィール] 河治良幸(かわじ・よしゆき)/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。
河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji