地面反力をジャンプ+回転に活用、最大エネルギーでボールを捉える マスターズ優勝、スコッティー・シェフラー
【勝者のワザ】 マスターズで2年ぶりの大会2勝目を挙げたスコッティー・シェフラーは、スイング中の下半身の動きがバタつくようで、一見バランスを崩しているかのように思える。 フィニッシュがピタリと決まるトッププロが多い中で、いかにもオリジナリティー豊かな独特の動きが目を引く。 下半身は、スイングの土台でその上で胸、肩をターンさせ、腕、クラブを振るのがスイングの基本とされてきた。 シェフラーのスイングは、そこに一工夫が加えられている。回転スピードを速め、よりエネルギー効率を高めるべく地面反力を活用しているのだ。その方法というのが、フィギュアスケートの回転ジャンプに似ている。 回転のことを考えなければ、最も単純な地面反力の使い方としては、サージャントジャンプがある。簡単にいえば、その場での垂直跳びだ。ヒザを深く曲げ、合わせて腕を下に振り下ろしてから真上に跳び上がり、腕を振り上げることで高く跳べる。 ただ、この動きをそのままゴルフスイングに取り入れると、力強くはあるが、上下動ばかりが強調され、ダフリやトップのミスが増えることになる。実は、飛ばし自慢のアマチュゴルファーに、このタイプが多い。やはりゴルフには回転力との連動が大きなテーマということになる。 そこでシェフラーのスイングである。回転ジャンプのように、身体をターンさせながら跳ぶことで、最大エネルギーでボールを捉えているのだ。 ジャンプすれば、その力が強いほど足底は地面から離れてしまう。シェフラーのスイングに見られる下半身のバタつき感はそれが原因になっているのだが、練習を続けて自分のスイングスタイルとして確立しているのが並ではない。 こうなれば、フォームは関係ない。打ち出されるショットだけが評価の対象になってくるものだ。今や世界ナンバーワンの座を不動のものとしたシェフラーはそれにふさわしい№・1のボールストライカーとしての評価も得ている。 ボールを打つ前に回転ジャンプを1回転でも半回転でもいいから試みてみると、違った世界が展開されるかもしれない。
■Scottie Scheffler 1996年6月21日生まれ、27歳。米ニュージャージー州リッジウッド出身。テキサス大卒業後の2018年にプロ転向。19年に米下部ツアーで2勝。20年にレギュラーツアーでポイントランキング5位に入り、ルーキー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた。22年2月の「フェニックス・オープン」での初優勝など米ツアー通算9勝。190センチ、91キロ。