〈ロシアにとってのアサド政権崩壊〉大規模軍事拠点を失う三つの損失、地中海・アフリカへの影響力に陰りか
ワシントン・ポスト紙の12月10日付け解説記事が、アサド政権の崩壊によりシリアのロシア軍基地の将来が危機に晒されているが、同基地を失うことがロシアにとって如何に大きな損失になるかを解説している。概要は以下のとおり。 ロシアのシリア軍施設には、潜水艦を停泊させる地中海の軍港や、中東とアフリカに戦力を投射する飛行場などがある。しかし、反政府勢力がクレムリンの支援を受けるアサド大統領を追放した後、これら施設の将来は不透明だ。 現在シリア国家を掌握しているイスラム主義グループ「ハヤト・タハリール・アル・シャム」(HTS)は、政権を支援していた外国勢力を批判している。ロシアはシリアの13年間の内戦でアサド大統領を支援し、2015年以降は反政府勢力を空爆して、政権を長引かせてきた。 シリアには他の国々も軍事施設を維持している。シリアとヨルダンの国境にあるタンフの米軍基地には特殊部隊が駐留しており、トルコはイドリブや北部のその他の地域に基地を置いている。しかし、ロシアの基地は規模、戦略的重要性、そして脆弱性の点ではるかに大きい。 最も有名なロシアの基地は地中海沿岸にあるラタキア県のタルトゥース海軍基地とフメイミム飛行場だ。 ロシアはタルトゥース基地を冷戦時代の1977年に建設した。ソ連崩壊後、2015年にロシアが内戦に介入するまで、基地はほとんど使われていなかった。その後、ロシアは49年間のリース契約を結び、施設を拡張した。 15年にシリアの空港にフメイミム空軍基地が建設されたことは、モスクワとダマスカスの関係が深まっていることの表れだった。同空軍基地もまた、17年に締結された49年間のリース契約の対象だった。 ロシアはシリアに数万人の部隊を派遣したと主張している。ウクライナ戦争開始以来、駐留部隊は減少しているようだが、一部の部隊は残っている。 ロシアはシリアに他にもいくつかの軍事施設を保有しており、それには同国中心部の2つの空軍基地とS-400防空システムの2つの施設が含まれる。